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中井徳太郎・前環境次官、日本製鉄へ 西村、山口、小泉氏ら歴代環境相が期待

前環境事務次官の中井徳太郎氏が9月1日付けで日本最大級のCO2排出企業である日本製鉄の顧問に就任した。環境省OBが鉄鋼企業の顧問に就任するのは初めて。

中井氏は本紙に「今まで脱炭素の音頭をとってきたが、これからは脱炭素へ向けて自ら汗をかこうと思い、顧問就任の依頼に応えた」と語った。業界首位の日本製鉄はCO2排出をしない水素製鉄の実証や大幅削減できる大型電炉の新設を計画中だ。業界2位のJFEスチールは1日、岡山県の高炉1基を電炉に転換する方針を発表。鉄鋼業界は2050年カーボンニュートラル(CN、炭素中立)、30年度に温室効果ガス13年度比46%削減の国の目標に向けて本格的に始動したばかりだ。

西村明宏環境相は6日の閣議後記者会見で「鉄鋼業界にとってCNは、難しい課題であると同時に大きなチャレンジでもある。いま業界あげての総力戦に取り組んでいると承知しているが、前次官の中井さんも、この取り組みに身を投じる決意と聞いている。環境省としても活躍を期待している」と述べた。

歴代の環境相からも期待する声が本紙に寄せられた。

「中井前次官の日本製鉄顧問就任は『脱炭素を制する者は次世代を制する』という象徴のような人事だ。期待は大きい」(山口壮前環境相)

「前環境事務次官が製鉄業界に行くとは、脱炭素時代を象徴するニュースだ。日本製鉄の脱炭素への本気度を感じる、闘う官僚・中井さんの民間での闘いを心から応援している」(小泉進次郎前々環境相)

原田義昭元環境相、中川雅治元環境相からも驚きと期待の声が寄せられた。

中井氏は1985年東大法学部を卒業、大蔵省(現財務省)に入省。理財局計画官、主計局主計官(農林水産担当)を経て、2011年7月に環境省総合環境政策局総務課長に就任。17年7月総合環境政策統括官、20年7月に事務次官に就き、22年6月30日付で勇退。7月1日から環境省顧問に就任していたが、8月31日付で退任した。

中井氏といえば、氏の強い思いを込めて大臣官房審議官の時から手掛けた人と自然が共生する「森里川海プロジェクト」が代名詞だ。統括官のとき18年4月、閣議決定した第5次環境基本計画では同プロジェクトを発展させた形で地域循環共生圏構想(通称「環境曼荼羅」)を打ち出した。わが国発の脱炭素化・SDGs(国連の持続可能な開発目標)の実現へ向けた構想だ。次官だった今年6月には政府の骨太の方針に10年間で20兆円の「脱炭素国債」こと「GX経済移行債」を盛り込んだ。

中井徳太郎氏
中井徳太郎氏