生物多様性 枠組みの進捗指標や資金など焦点 COP16がコロンビアで開幕 「過去50年で73%減少」WWFがレポート
国連生物多様性条約の第16回締約国会議(COP16)が21日、コロンビアのカリで開幕した。今回の会議では、前回のCOP15で採択された2030年までの新たな世界目標である「昆明・モントリオール生物多様性枠組み(GBF)」の実施に向け、その進捗を測る指標や資金等の資源動員、遺伝資源に係る塩基配列情報(DSI)による利益配分の仕組みなどが焦点。会期末の11月1日までに合意を目指す。一方、COP16に先立ち、世界自然保護基金(WWF)インターナショナルがこのほど発表したレポートによると、世界の自然と生物多様性の豊かさは過去50年間で73%減少するなど、地球は危険な転換点(ティッピングポイント)に直面していると警鐘を鳴らしており、今回の会議における交渉の行方が注目される。
前回のCOP15で採択されたGBFでは、30年までの行動目標として、陸と海の30%以上を保全する「30 by 30目標」など計23個の目標が設定された。これらの進捗を測るための指標については、これまでの交渉で、各指標の算出方法や国別報告書で報告することとされている選択回答式(バイナリー)指標が具体的に検討されており、COP16での最終合意を目指す。
また、GBFを実施するための資金など資源動員については、各国の目標達成を支援する「世界生物多様性枠組み基金(GBFF)」が23年8月に地球環境ファシリティ(GEF)の総会ですでに発足している。しかし、条約加盟国の中には、その運用のあり方を批判し、新たな基金の設置を求める声が出ており、交渉が難航している。
さらに、DSIの関連では、前回のCOP15で、その利用による多数国間利益配分メカニズムを設置することと、その詳細については公開作業部会を設け、COP16に向けて検討することが決定されている。そのため、これまでの交渉で、利益配分の対象やDSIが由来する地理的情報を含む利益配分の考え方、名古屋議定書との関係などが検討されており、COP16での最終合意を目指す。
関連して、経団連は15日、COP16に向けた声明を発表している。それによると、GBFの進捗に関する指標については、さまざまな主体の参加につなげるためにも、計測が容易で分かりやすい納得感のある指標が設定されることを期待するとしている。
DSIの関連では、多数国間メカニズムによるグローバル基金への資金拠出は任意とすることや、「研究とイノベーション」を妨げないこと、「データのオープンアクセス」が尊重されることなどを求めている。
一方、WWFインターナショナルがこのほど発表した「生きている地球レポート2024」によると、計5495種の野生の脊椎動物(両生類、鳥類、魚類、哺乳類、爬虫類)における約3万5千の個体群の分析に基づき、ロンドン動物学協会が作成した指標をもとに、世界の自然と生物多様性の健全性を測定した。その結果、この指数が1970年から20年までのわずか50年間に平均で73%も減少している深刻な現状が明らかになったとしている。
そのうえで、自然の損失と気候変動の2つの連鎖した危機により、地球が危険なティッピングポイントに直面していることや、30年に向けた今後5年間の各国政府や民間セクターの取り組みの重要性がかつてないほど高まっていると強調。国立公園等の保護区や保全上重要な地域に対する政策といった自然環境保全のあり方や食料システム、エネルギーシステム、金融システムの4分野における変革の必要性を訴えている。