エネルギーコンサルタント・越智文雄の「持論・時論・自論」 ~ 夢のエネルギー原子力(4)
灯りが消える ガリウム輸出禁止
さて、年末は社会経済にとって非常に大きなニュースがメディアにほとんど注目されずに見過ごされてしまいました。
みなさんご存じでしょうか。 昨年12月2日に米国は中国に対して半導体技術の輸出規制を行い、3日にはそれに対抗して中国は米国へのガリウムほか稀少資源の輸出禁止を発表しました。国内では17日に原子力の再稼働をシナリオとする「第7次エネルギー基本計画案」が発表されました。年末ギリギリの24日には、一昨年11月に締約された「水銀に関する水俣条約」の施行に関する政令が閣議決定されました。
今までもこの連載でお伝えしていますが、「2027年で蛍光管が製造禁止になる」という行政災害とも言える国難は、中国が独占するガリウムという稀少資源の輸出禁止カードを平気で切ることがはっきりしました。台湾有事や尖閣諸島問題など外交上の対立が起きれば、日本ではLED照明を作ることができなくなります。半導体資源としての重要性の方が優先されるでしょうが、日本の経済安全保障の「いまここにある危機」です。
LED照明の原料を絶たれた米国がこれまでどれだけ照明のLED化を終わらせているのかも注目されます。147カ国の水俣条約締約国会議で決定した27年の製造禁止に向けては、米国も含めて各国は着々と準備しているはずです。米国の照明メーカーはLED原料を調達できなくなったのですから、国際資源競争、LED争奪戦が激しくなるのは明白です。トランプ大統領は地球温暖化問題としての省エネには反対する立場なので「白熱電球を使えばよい」と言っているそうですが、この条約締結は覆らないでしょう。
一方で日本は照明が何億灯あるのか需給バランスも考えずに、国際会議において多数決で負け越しておきながら、丸1年間この問題に何の手も打たずメディアも注目しない年末ギリギリに閣議決定し、初めて国民に知らせました。なぜ照明が無くなるという極めて重要な事実が1年間も放置され、年末にそっと発表されたのか。これはその1週間前に発表された原子力再稼働をシナリオとするエネルギー基本計画の発表があったからだと思います。(次回は2月3日配信予定)