AD_pwcスーパーワイド2層目

脱炭素、SDGs時代と地中熱利用 地中熱利用促進協会 笹田 政克 理事長に聞く

 2050年脱炭素、持続可能な開発目標(SDGs)の実現などに向け、再生可能エネルギーへの関心が高まっている。そうした中、再エネの一つである地中熱の果たす役割や利用促進に向けた取り組みについて、地中熱利用促進協会の笹田政克理事長に聞いた。(エコビジネスライター・名古屋悟)

 ――脱炭素化やSDGsといった目標に向かって社会が動き始めている状況をどう見ているか。

 政府の脱炭素宣言から2年が経った。2021年にはエネルギー基本計画と地球温暖化対策計画の改定が一体的に行われ、50年のカーボンニュートラルおよび30年の温室効果ガス排出削減目標46%、挑戦目標50%が明記され、これらの目標に向けた政策の大枠が示され、50年に向けてわが国がどのように進もうとしているのか、その大筋が見えてきている。

 この基本的な政策の枠組みの中で、地域・くらしの分野を環境省が地球温暖化対策推進法を改正するとともに50年までの展望を示す地域脱炭素ロードマップ、30年目標を示す脱炭素先行地域などの政策を、製造業などの産業分野を経済産業省が省エネ法を改正するとともに50年までの展望を示すグリーン成長戦略、グリーントランスフォーメーション(GX)実現に向けた基本方針をそれぞれ示し、脱炭素に向けた取り組みを進めようとしている。

 26年からは排出量取引市場が本格稼働し、28年からは炭素賦課金が始まる予定である。そして今後10年間で150兆円を超えるGX投資が行われることにも注目していく必要があるだろう。

 ――脱炭素化、SDGs実現に向けて地中熱が果たす役割は。

 日本における脱炭素に向けた考え方は、電化シナリオがベースにあり、太陽光発電など再生可能エネルギー発電(再エネ発電)に力点が置かれている。しかし、脱炭素化に至る過程を考えると、電力需給の問題で供給が不安定な点が懸念される。需要側の電力消費量を下げる視点がやはりとても重要であり、再エネ発電だけでなく、熱をうまく活用する必要があると考えている。

 例えば、再生可能エネルギー熱である地中熱は、ヒートポンプを利用することで効率的に熱を使えるようになるものであり、電力使用量を減らす効果が高く電化シナリオの中でうまく活用できる。

 電気と熱をうまく組み合わせることで、電気の比率を下げながら100%脱炭素は実現可能なシナリオだと考えており、関係各方面において熱の役割を今一度認識していただきたい。

 一方、SDGsは15年に国連で採択され、持続可能な社会をつくるための17のゴールが示された。環境・社会・経済の諸問題が包括的に取り上げられ、持続可能な社会を実現していくための基調となっている。一つの課題への取り組みが他の課題と絡み合うことから、多くのステークホルダーのパートナーシップを促進していくことが、持続可能な世界を創るための鍵となる。

 当協会は内閣府の地方創生SDGs官民連携プラットフォームの会員でもあり、17のゴールの中から協会が直接・間接的に関わっている7つのゴールを抽出し、「協会が取り組むSDGs」をまとめたところである。それらのゴールを実現するため、国、自治体、企業、団体、市民と共に活動を進めていきたい。

 地中熱はエネルギーであるので、直接的に関わる目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」や目標13「気候変動に具体的な対策を」はもちろんだが、例えば目標3「すべての人に健康と福祉を」においても役割を果たせる。コロナ禍以降、重視されている換気についても、換気とエネルギーを絡めて考えていく必要がある。換気量が多い場合に外調機が使われるが、室内と温度差が大きい外気を取り入れることで空調エネルギーの負荷はどうしても大きくなってしまう。この換気に伴うエネルギーの超過分を地中熱や地下水熱を使うことで、キャンセルできる。健康的で快適な生活を自然エネルギーで賄うことで持続可能性は高まることから、こうした視点もとても大切になる。

 ――脱炭素に向けた動きの中で国が選定する脱炭素先行地域が注目されている。すでに2回選定が行われているが、これまでの動向を踏まえ、地中熱利用を広げるためにはどのようなことが必要だと感じているか。

 脱炭素先行地域についてはこれまでに計46地域が選定され、このうち2地域で地中熱利用が盛り込まれている。

 現在、第3回の公募が行われているところだが、これまでの選考結果等を踏まえ、地中熱はじめ再エネ熱利用を脱炭素先行地域で推進していくためには、計画を国に申請する地方自治体はもちろん、その地方自治体に具体的な取り組みを提案する各地域のコンサルタントや設計事務所等における再エネ熱利用の認知度を上げ、有効性を認識していただかなければならない。今後開催する新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の人材育成講座等においてコンサルタントや設計事業者にも声掛けし、アプローチしていきたい。

 なお、2月2日に当協会がENEX展と併催で開催する第3回全国地中熱フォーラムでは、脱炭素先行地域に選定されている島根県邑南町に「脱炭素先行地域づくりに向けた地中熱利用の期待」をテーマに講演していただく。

 ――脱炭素化等に向けて今後どのような活動を行っていくか。

 協会では17年に「地中熱の普及拡大 中長期ロードマップ」を作成しているが、今年度は新設した普及戦略本部でこのロードマップの見直し作業を始めている。地中熱の将来における目標値である年間利用量134万キロ㍑原油換算(国による再エネ熱目標値の10%相当)、年間CO2削減量100万㌧については、きわめて高い目標であり、あるべき姿として変更する必要はないという意見が出されている一方で、近年の導入量の伸びが鈍化している状況に目を向けると、戦略の見直しが必要であることは明らかだ。

 カーボンニュートラルという50年目標に向けた国の政策と、30年目標の実現に向けた地域・くらしの分野での政策、製造業などの産業分野での政策が見えてきた中で、これらの政策と関連付けて地中熱の普及拡大を図るには、どのような活動が必要か今年検討を進め、50年までのロードマップを作成したいと考えている。

 広報、啓発に関わる活動については、20年から続く新型コロナ感染症の終息が見通せない状況ではあるものの、社会活動は着実にコロナ前に近づいている。協会活動はオンラインでの行事を取り入れながら、コロナ前の年間スケジュールに戻ってきており、今年も多数の行事を予定している。

 直近では先ほども触れたが、2日に第3回全国地中熱フォーラム「地中熱で育む脱炭素とSDGs」を東京ビッグサイトでENEX展と同時開催する。地中熱・再エネ熱セミナーも同日、展示ホールで開催の予定であるほか、ENEX展には協会も共同ブースを設けており、会員企業が出展する。

 なお、次回第4回全国地中熱フォーラムは、23年度に佐賀市で有明未利用熱利用促進研究会と共同で開催することが決まった。詳細が決まり次第、協会ホームページ等でお知らせしたい。

 地中熱講座については昨年7月に基礎講座、11 月に施工管理講座を実施したが、設計講座に関しては、今年度はNEDO人材育成講座の事業として3月に実施する予定である。

 その他、春の補助金説明会、オリエンテーション、秋の地中熱施工管理技術者資格試験も従来に近い時期での実施を予定している。

 近年、協会では地中熱だけでなく再エネ熱全体の普及拡大に向け、ソーラーシステム振興協会、日本木質バイオマスエネルギー協会と共に再エネ熱利用促進連絡会を立ち上げ、エネルギー基本計画や地球温暖化対策計画等見直しの際にも再エネ熱利用促進連絡会を通じ、提言等を行ってきた。22年度から2年間の予定で実施されているNEDO再エネ熱人材育成講座も再エネ熱利用促進連絡会を通じて2団体に協力していただいており、昨年は11月に再エネ熱講座基礎編(申込者数70名、受講者数平均55名)、12月にシンポジウム「再エネ熱普及の取組とネットワーク」(申込者数240名、参加者数平均137名)を共にオンラインで実施した。23年度も再エネ熱講座応用編と2回目のシンポジウムを実施する予定である。

 ――熱利用を検討する関係者に向けたメッセ―ジを。

 日本はエネルギー資源が限られている国である。現在の国際情勢等をみると、厳しい状況が続くことが予測される。今後ますます国産エネルギーの重要性が増していくだろう。

 再生可能エネルギーは地域に賦存するもので、地域ごとに特色がある。地方自治体には、地域にどういうエネルギーがあってどのように使えるのかを知って欲しい。

 そして、中長期的な政策を作り、人が代わっても引き継がれていくような政策をぜひ実現していただきたい。

 地域に賦存する再エネの熱利用は、SDGsの視点から考えて見ると、導入に至るプロセスにおいて地元企業が関わる仕事が多く、地域産業の活性化につながることも期待できる。

 地域にある再エネの活用については、再エネ熱利用促進連絡会の3団体において相談に対応しているので、ぜひ相談いただければと思っている。

 また、再エネ熱利用はネット・ゼロ・エネルギービル(ZEB)など建物における取り組みがクローズアップされることが多いが、農業や水産業においてもエネルギー消費量の削減等に大きな効果が期待できる。すでにシイタケ栽培など温度管理が必要な農業分野で導入するケースが出てきているが、今後拡大が期待されている陸上養殖などにおいても地中熱、地下水熱の利用が広がる余地があると思っている。陸上養殖では飼育用に地下水をくみ上げ水槽に供給しているが、その地下水を水資源としてだけではなく、熱資源としてカスケード利用することが可能である。農業・水産業分野における脱炭素化でも地中熱等のさらなる普及拡大を図っていければと考えている。

脱炭素、SDGs時代と地中熱利用 地中熱利用促進協会  笹田 政克 理事長に聞く_地中熱利用促進協会 笹田政克理事長
地中熱利用促進協会 笹田政克理事長
脱炭素、SDGs時代と地中熱利用 地中熱利用促進協会  笹田 政克 理事長に聞く_地中熱利用促進協会が取り組むSDGsのゴール
地中熱利用促進協会が取り組むSDGsのゴール