人材を育て活かす環境づくり(48) シューファルシ 代表取締役 武本 かや
廃棄物処理業界の今後の動向について、講演してほしいという要望が最近増えています。処理技術の進歩や処理物の再利用術など日々、企業としてもさまざまな努力を重ね今までとは違う方向で事業計画を立てたり、新しいことに挑戦している事業者も増えてきました。
その中で私は、大きく2つに分かれていくと思っています。施設や設備に独自性を持たせたものづくり化と、今いる人材を専門家集団に育成するコンサルティング化の2つです。なぜなら、変化の激しい先行き不透明な時代に生き残っていくためには、グリーン意識の高まってきた動脈側の動向に合わせて事業方針を決めていく必要があります。そこで、資金力のある大手は設備投資ができるかもしれませんが、中小零細にとってはそこまでのリスクは背負えないので、今ある人材の有効活用を考えると今までの経験則をベースとした提案やサポートができるコンサルティング化のほうが、リスクは少なくて済みます。
しかしながら、廃棄物処理業界でもよく課題の項目に上がるのが「人材不足」の次に「人材育成」。人材育成ビジョン、方針、戦略を立てたとて、実際に育つがどうかは本人次第です。世代が違えば、価値観や考え方も違う。それぞれ個性も違う。そして、何よりも本人の意欲や意識をどう変化させるのか。そこを課題と捉えている人が多いと思います。
人材育成は新聞やネットで出ている取り組み事例を真似したところで同じように上手くいく保証はないです。なぜなら、企業それぞれ、実態は異なります。そこで働く人たちが感じている自社の魅力や経営者の想い、第三者からの企業イメージと当事者たちが感じているギャップなど、同じものはありません。また、いくらAIが優れていると言っても、今までの経験則による感覚や状況に応じて臨機応変に対処するなどの現場対応力も廃棄物処理業の仕事には必要なスキルです。このスキルをプログラム化するのは難しいと思います。
現場対応力を身に付け、向上させるには、体験を通じて学ぶことに加え、自分で考えて新しいことにもチャレンジして成功体験を積める環境が必要なのです。また、本人の意識変革も必要。今の人材育成のやり方を見ていると、儀式的な研修を受けさせ、躓きそうな石があれば本人が気づく前に取り除き、やってはいけないことをしても、「パワハラ」というキーワードに恐れ、優しくなでるように注意するのみ。そして肝心な心の部分を教えない。それでは人は育ちません。
人材はロボットではないのです。プログラムで動くのではなく、心で動く。心の育成も同時に行わなければなりません。心の教育とは「なぜ、何のために、それをするのか」という、動機と理由付けです。そこを経営者も育成担当者も分かってないのが真の課題だと私は思っています。人材育成は、時間がかかるもの。だからこそ、人材育成にもビジョン、方針、戦略、計画が必要なんです。そして、「なぜ、何のために」という動機と理由付けも技術と一緒に教えることが大事です。