柏崎刈羽原発、再稼働「容認」表明 新潟県知事 東電・国の地元対策が後押し

新潟県の花角英世知事は21日、県庁で臨時記者会見を開き、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働を容認すると表明した。12月2日開会の県議会で自身の判断について信任を諮った上で国に伝える。議会が了承すれば、再稼働に向けた地元同意のプロセスが年内に完了する。避難道路

2011年に福島第1原発事故を起こした東電が、事故後初めて原発を再稼働させる公算が大きくなった。東電は議会了承後、1、2カ月で準備を整え、早ければ来年1月にも6号機を再稼働できる見通しだ。

会見で花角氏は、再稼働に関する県民の賛否は分かれているとした上で、「安全対策や防災対策の取り組みについて正確な情報を県民に提供し続けていけば、再稼働への理解も広がると判断した」と述べた。容認の条件としては、安全性の周知や柏崎刈羽原発の監視強化チームへの実効性の丁寧な説明など、7項目に対応するよう国に確約を求めるとした。

花角知事は再稼働の判断後、その判断について県民に「信を問う」と公言していた。その方法として県民投票といった案も例示していたが、結局、県議会での審議を選んだ。その選択について、知事は「現行制度上、(知事の)信任、不信任を決められるのは県議会しかない」と説明した。

12月の県議会に再稼働に関連する広報費3千万円を盛り込んだ補正予算案を提出して、その可否で知事信任の判断をするとの見方が出ている。信任されれば、地元同意を得たと判断する。県議会は知事与党の自民党が過半数を占めており、知事の判断を追認する可能性が高いとみられる。なお立地自治体の柏崎市と刈羽村はすでに容認の姿勢を示している。

東電は21日、「知事の判断を厳粛に受け止めている。発電所の安全性の維持・向上に責任を持って行動と実績で示していく」とコメントした。

赤沢亮正経済産業相は21日の記者会見で「花角知事の判断に感謝申し上げたい」と述べ、知事の再稼働容認表明を歓迎した。赤沢氏は、知事が再稼働の了解に当たり国に要請した7項目の一つ、電源三法交付金制度の早期見直しについては「今後議論を深めたい」と述べた。今年2月に閣議決定した第7次エネルギー基本計画で、必要な財源確保に向けた方策の検討・具体化を含め、地域の持続的な発展に向けた取り組みを進めていくと記述したことを踏まえて対応するとした。

なお東電の小早川智明社長は10月16日、県議会に参考人として出席し、電源三法交付金とは別に、再稼働を前提として東電自身が県に10年程度で1千億円の資金を基金を通じて拠出する方針を表明している。小早川社長は使い道について「裁量は県にある」とした上で「地域経済活性化のために貢献したい。成長が期待される防災産業や新事業創出、雇用創出で活用していただきたい」と話した。再稼働による火力発電の燃料削減効果に応じ10年程度、提供を続けるとした。東電は6号機に続き、7号機も29年度中に再稼働させたい考えだ。

政府も再稼働に向けて県に強く働きかけた。経産省の村瀬佳彦・資源エネルギー庁長官も10月16日の県議会で、重大事故時の避難路として使う高速道路や国道を全額国費で改修する方針を打ち出した。「通常の道路予算とは別枠で、地方負担なく整備したい」と述べた。県の試算で総額1千億円を超える規模だ。

こうした手厚い東電や国の地元支援が、花角知事の再稼働容認につながったともいえそうだ。柏崎刈羽原発が再稼働しても東北電力から電気を供給されている新潟県民の電気代が下がるわけでもないからだ。県が10月に公表した再稼働に関する県民調査結果でも、約7割の県民が「具体的なメリット」を求めた。

柏崎刈羽原発の再稼働は国の原発政策に大きな追い風となる。人工知能(AI)向けデータセンターの増加で電力需要の拡大が見込まれる中、原発の安全性への不安が根強い東日本で理解が進めば、再稼働の加速が期待できるからだ。また脱炭素化にも貢献する。