kankyo_850150

東風西風(2025年5月7日)

大阪・関西万博シグニチャーパビリオンの1つに、小山薫堂氏が手掛ける「EARTH MART」がある。テーマは「食を通じて、いのちを考える」。私たちの生命がどれほど多くの食材(命)に支えられているのかを、さまざまな角度から教える▼未来のゾーンでは、99歳の鮨職人すきやばし次郎氏が、プリン体のない白子やアレルゲンフリーのエビなど、持続可能な未来のすしネタを見事な手さばきで淡々と握る。進化する冷凍食やみんなを幸せにする未来のお菓子なども並び面白い▼「世界の食卓」では各国の、家族1週間分の食材をパネルに。例えばフランスの一家は、握りずしをはじめ国際色豊かな加工品など多彩な食材を囲む。対して難民キャンプや紛争地の一家は、穀物や乾物が主で、驚くほど種類も量も少なく野菜すらほとんどない。それでも、子供たちの瞳の輝きと一家そろっての笑顔は印象的だ▼さて日本の食生活はどうか。フランス一家に近く一見豊かに見える。だが実状は全く異なる。食の多様化が進んでいるのは同じでも食糧自給率に大差が▼唯一100%自給と言われてきたコメさえも今や危うい。減反政策の果てに行きついた惨状。国とともに飽食の国民にも責任はあろう。私たち自身も今一度「食」を見つめ直したい。(孝)