東風西風とうふうせいふう

以前、本紙環境広場でも取り上げたことがある「ソーラークッカー」は、季節や気温、緯度や高度に関係なく、直射日光さえ当たれば約4時間で、約40人分の食事が作れる。コメが炊け、パンが焼け、フライドポテトも揚がる▼「エネルギーの心配なしに、毎日温かい食料が作れるように」と、世界の貧困地域に向けて発明したのは兵庫県の福寿喜寿郎氏。スイッチも配線もないシンプル構造で、メンテもいらず、説明書などなくても感覚的に使える▼本体やパネルは熱くならないが、鍋の部分は160℃以上になり、医療器具の煮沸消毒にも使えることが実証されて、活用範囲が拡大。NPOの協力で、マラウイでは辺境の農村部などに17台が設置されている▼電気・ガスが通っていないため、従来薪を使うしかなかった消毒や調理を無料のクリーンエネルギーで。現地の人には、まさに神器である。「便利」はもちろん、薪を使ってCO2を多く排出することは地球環境に良くないと胸を痛めており、その課題解決にもなると▼福寿氏の試算では、この神器は薪に比べ1年で700キログラム-CO2の削減になる。もしカーボン・クレジットとして認められれば、一家に一台の普及も夢ではないという。認証制度と新開設市場の拡大に期待したい。(孝)