東風西風(2025年3月12日)
雑草や廃棄野菜を使って地域防災向けのメタンガス発電システムを開発した石川県立大学生物資源工学研究所講師の馬場保徳氏は、3・11による避難所生活で「携帯電話の電源」、「明かり」などを得るために電力の確保が重要なことを思い知らされた。当時同氏は東北大学で食品廃棄物からメタンガスを作る研究をしており、メタンガスを燃料に発電をすることを考えたが、発災直後は原料となる食品廃棄物の入手ができず断念した▼こうした教訓で考えたのが屋外にたくさん生えている雑草を原料にしたメタン発酵システムだ。生物を人工装置内で培養し続ける独自技術の開発とともにメタンガスを電気に変換できる小型発電機を開発。メタン発酵時に出る残さ液の肥料化にも取り組んだ。完成したシステムは2023年にオンサイト型のメタンガス発電機「エコスタンドアロン」としてショッピングセンターに設置されており、災害発生時に炊き出しや充電できる防災拠点としての役割を果たす▼令和6年能登半島地震の際は同システムを被災地に持ち込もうとしたが、通行が大型トラック優先で断念した。この経験から同氏は平時から想定被災地で同システムが稼働していないと有事に電力を迅速に得られないことを強調する。(平)