東風西風(2025年6月25日)

新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)から5年余が経った。日常生活を大きく変えたこの出来事は未だに記憶に新しい。とはいえ、喉元過ぎれば熱さ忘れるとの例えもある。パンデミックはいつ来るか分からないが、またやって来るのは確か。過去を教訓に将来に備えることが、我々が今すべき役割であろう▼先日都内で開かれた日本下水サーベイランス協会の講演会で尾身茂氏の話を聞き、その意を強くした。尾身氏は、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の会長として感染対策の陣頭指揮をとった。当時の葛藤などを振り返るとともに、下水サーベイランスへの期待を語った▼下水サーベイランスは、地域の感染状況の把握や変異株の検出を可能にする画期的な公衆衛生ツール。個人情報の問題もなく費用対効果も高い。感染症以外に薬物などにも応用できる。尾身氏は、パンデミック以前からこの新たな疫学的手法の有用性に着目し、その活用を国に提言してきたという▼しかし、日本の取り組みは遅々として進まない。尾身氏は、政治的リーダーシップの欠如をその理由の一つに挙げた。「次のパンデミックに必須」の対策だとし、法制度化の必要性を訴えた。国主導の社会実装をすぐにも加速すべきだ。(宜)