東風西風 とうふうせいふう
「2025年日本国際博覧会」の現場を視察してきた。地下鉄駅、国内外の各種パビリオン、会議場など、いずこも建設工事の真最中だが、建設費の無駄遣いと騒がれた「大屋根リング」の建設は9割以上完成しており、入ることができた▼清水の舞台同様の伝統工法「貫」建築はまさに「百聞は一見に如かず」。中に足を踏み入れた瞬間のえも言われぬ爽快感と、あとに押し寄せる高揚感。CO2を吸収し、室内の空気を清浄化すると大注目の木造建築だが、木材の力はこんなにも大きいのか。汗が一気に引き、不思議な安らぎ感にも包まれる▼3つのゼネコンJVが工区別に工事を進めているが、9月には1つにつながり、外周約2キロメートルの世界最大級の木造建築物に。内側の各国パビリオンを抱える形で「多様でありながら、ひとつ」の万博コンセプトのシンボルとなる▼視察した大林組JVの現場では、柱は愛媛の桧、梁は福島県の杉と資材の約半分が国産で、加工は福島県・浪江町と、国内の森林と林業の循環や被災地復興にも一役。屋根は円につながるが土台は109個の角形ユニットと、解体も再利用も容易な構造で、設計面でも環境配慮に富む▼VRやテレビ会議が進んだ今、なぜ万博かの論もあるが、「今だからこそ、現場」を実感した。(孝)