東風西風 とうふうせいふう
水俣病の行政の認定基準である「昭和52年判断条件」(環境庁環境保健部長通知)が2013年4月の最高裁判決で否定されたにもかかわらず、未だに国は見直そうとしていない▼この最高裁判決を受け、環境省は水俣病認定の総合的検討に関する新たな通知を14年3月に出したが、日本精神神経学会はこの新通知に反対する見解を法委員長名で同年11月に発表している▼それによると、新通知は科学的根拠を示すことなく水俣病被害者を闇に葬り続けてきた「昭和52年判断条件」の維持を前提にしたものであり、到底認められないと批判▼また、新通知では「平成3年中公審答申」に留意するよう求めているが、この答申を作成した専門委員会の議事録などを同学会が詳細に分析した結果、「昭和60年医学専門家会議の意見」にも科学的根拠がないこと以外に、医学専門家は医学からの逸脱、沈黙と隠蔽、環境庁と大蔵省への配慮等の点で積極的に「負の役割」を果たしたことが明らかになったとしている▼そのうえで、同見解では、「昭和52年判断条件」と新通知は撤回すべきであり、水俣病問題の原点である「食中毒事件」として法的な対応に戻ることが重要と強調している。国は従来の水俣病行政の誤りを認め、根本的な政策転
換を図るべきである。(真)