東風西風とうふうせいふう
新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類が季節性インフルエンザと同等の「5類」に移行した。政府による一律の行動制限要請はなくなり、感染症対策は個人や事業者の判断に委ねられる。3年以上に及んだ新型コロナへの対応は平時の体制に戻ることになる▼これからは医療体制も変わり、幅広い医療機関が入院や外来診療に対応する。一方、これまでの感染状況の全数把握が一部の医療機関による定点把握に切り替わる。これにより感染状況のリアルタイムかつ正確な把握が難しくなる。感染状況の情報は各自が対策するうえで欠かせない。定点把握を補う新たな体制の整備が求められる▼そこで注目されるのが、感染拡大の兆候を早期に察知できる下水サーベイランス(下水疫学調査)の活用だ。下水疫学調査は、下水中の病原体などを測定することにより、症状がない感染者も含めた感染状況を把握できる。地域の感染の有無、感染の拡大・減少の動向も掴める▼欧米では、政府が率先して下水疫学調査の導入を進めている。一方、日本の政府の対応は「調査研究を進める」と鈍い。いつまたパンデミックが起こるか分からない。平時の今こそ、感染症リスクに備えた強靱な社会づくりに向け、下水疫学調査の社会実装を急ぐべきだ。(宜)