東風西風(2025年1月15日)
政府は先月19日、2026年度から本格実施する排出量取引制度の具体案を示したが、それに対し、WWFジャパンは、依然として3つの問題点が残されており、さらなる排出削減に向けて、その改善が必要だとする声明を発表している▼声明によると、第1に、対象部門の総排出量に「1・5℃」経路に沿ったキャップを設けるべきだと指摘。キャップを設けないことは同制度のメリットを放棄することに他ならず、排出削減のドライバーとしての効能が大きく減じることになるとしている▼第2に、脱炭素投資の予見可能性は排出枠取引価格の上下限の設定によらず、本来であればキャップ、排出枠供給総量の縮小ペースをもって提示すべきだと指摘。それを通じて市場参加者は炭素価格水準の見当をつけることが可能になるとしている▼第3に、規制は法人単位ではなく事業所単位で行うことや、研究開発投資の費用は同制度の外で支援すべきだとして、実効性を強化する制度設計を求めている▼そのうえで、今回の具体案は産業界への配慮が強く窺われる内容で、それはある程度必要であるが、排出削減の効果が失われれば本末転倒だと強調しており、政府はこれらの指摘を踏まえ、同制度案の必要な改善を図るべきではないか。(工)