東風西風とうふうせいふう

貯金とスキルは貯められるようで貯まらない。お金は初めからそのままで残らないようにできているし、次々現れる新技術にたじろがないビジネスマンはいないだろう。移り変わることの「生々流転」が加速し続ける現代ほど、「万古不易」を賛美しにくくなった時代はない▼昨年、生産世代の能力を再開発する「リスキリング」が流行語大賞の候補となった。日本経済の置かれた状況や個々切実な労働者の生活など、さまざまな背景が指摘される。リスキリングによりレガシー産業から成長産業へ大移動する群衆のイメージは、あたかも文明の興亡をほうふつとする。平成期、世界をのんだ巨大企業のビジネスモデルすら貯めて置けるものではなかった▼公務員のリスキリングとは。長らく待遇・職能の手堅さの象徴だったこの領域は、DXのあおりを受けるまでもなく民間の資本や人材を活用するなど時代時代に新風を吹かせてきた。和田篤也・環境事務次官は「(地方の電力を賄う)再エネ事業は自治体が部局を持って営業すべき」と主張し、料金徴収のノウハウを持っている「水道局」が唯一の適任だと指摘する。これはリスキルだけを問題にしない。新しい時代へ、コアとなる変わらない業務を位置づけていくマネジメントの力を暗示している。(潤)