東風西風 とうふうせいふう

「甲辰」の年が明けて早1カ月。能登半島地震のニュースを聞かない日はない。賀詞交歓会をはじめ各種イベントはいずれも、亡くなった方のご冥福を祈り、被災された方へのお見舞いを込めた「黙とう」から▼大規模火災の跡、倒壊した家屋、損壊道路、法面崩壊、路面沈下等々、テレビの映像やレポートで現地を知るたび被害の甚大さに胸が痛むが、わずかな募金以外何もできずにいる▼だが、各方面のプロの仕事は違う。国交省の発表(第57報)によると、支援物資はプッシュ型で拠点から避難所や被災家庭に届け、港の再開、民間航空機の運航や鉄道の再開、道路整備など、復旧は着実に進んでいる▼被災地で漁を続ける人、海水を使って魚を処理する人、川から水を運んでブランド牛の飼育を続ける人など、前を向く人々の様子も伝えられ、辛抱強さとたくましさに感銘▼一方で、簡単には解決しない問題が「水とトイレ」だ。避難所訪問の首相に、今一番欲しいものを尋ねられた女性の回答もまさにそれ。「ペットボトルの飲料水はある。必要なのは生活用水」。能登地方8市町では未だに4万2千戸以上が断水し、復旧はまだ先になる。一般家庭の水道から出る水は1時間に約千リットル。蛇口をひねれば出る水に改めて感謝しつつ、被災地の復旧を祈る。(孝)