東風西風 とうふうせいふう
厚生労働省の水道行政を国土交通、環境の両省に移管することが決まった。今回の移管は厚労省の新型コロナウイルス感染症への対応能力強化が目的だが、これに関連して同省には、国交省と連携して下水疫学調査の社会実装を本格化してもらいたい▼同調査は、下水中のウイルスを測定することにより感染状況を検知・把握し、効果的・効率的な対策につなげるのが狙い。新型コロナのパンデミックを契機に日本でも関心が高まり、産学が中心となって研究開発が進められてきた▼すでに島津製作所や京都大学などは、個別施設を対象にした調査方法を事業化している。当初課題とされていた検出感度を高める技術開発も進んだ。北海道大学と塩野義製薬が共同開発した検出技術は従来の方法より約100倍感度が高く、短時間で結果が得られる▼下水疫学調査の社会実装への基盤は整いつつある。ウィズコロナの時代。今後も新たな変異株や未知の感染症の発生が懸念される中、同調査を感染症対策の有力なツールと位置付け、インフラの一つとして整備していくことが必要だ。まずは全国の代表的な都市で先行して同調査の実装を進めたい。政府や厚労省にはそのための予算確保、関係法制度の拡充、自治体への支援などが求められる。(宜)