東風西風(2025年6月18日)
他の先進国に類を見ない長期の低成長、いわゆる〝失われた30年〟が続くのは日本版「環境福祉国家」が打ち上げ大破し、失敗した必然だった――。そんな所説につながりそうな論理を諸外国とのデータを突き合わせ説得的に導き出す京都大学の諸富徹教授。遅まきながら氏の考えの一端に触れた。「環境福祉」という正直どこか据わらない複合名詞も氏にかかれば鮮やかに結ばれる▼諸富氏は述べる。1970年代のオイルショックで徹底的な省エネを進め日本は競争力を勝ち取った。この時環境と経済は合致していたが後が続かなかった。90年代以降、国際的に地球環境問題が主流となるなかカーボンプライシング(CP)導入の検討は産業界の反対で骨抜きに。環境は経済を阻害すると言われた。この間、温暖化対策で先行した欧米諸国は産業構造を転換しGHGの排出減と経済成長を両立。「CO2削減と成長は矛盾しない」「CPが高いほど無形資産への投資が増える」▼省エネでは産業構造は転換しなかった。環境は稼げない産業をふるいに掛ける淘汰圧となり成長のブースターの役割を果たした。社会の流動性を高福祉が救う。労働者も起業家も守り、新たな挑戦を促す。環境福祉国家は何度でも新たに飛び立つことができる。(潤)