日本斎苑協会主催全国火葬情報交換会シンポジウム 「大型化し、高度化する火葬場の設置管理運営と総括火葬技術管理士の役割について」

◎出席者◎

コーディネーター
奥村  明雄 氏 (日本環境斎苑協会理事長)

パネリスト
喜多村 悦史 氏 (元東京福祉大学副学長)
横田   勇 氏(静岡県立大学名誉教授)
玉寄   将 氏(日本火葬技術管理士会会長)
大澤  正明 氏(仙台市公園緑地協会・葛岡斎場)
大菅   崇 氏(富士建設工業・新潟県阿賀北葬斎場)

火葬場の近代化と運営管理の適正化に取り組む日本環境斎苑協会は10月16日、仙台市のフォレスト仙台で第39回全国火葬情報交換会を開催した。その中のシンポジウムで「大型化し、高度化する火葬場の設置管理運営と総括火葬技術管理士の役割について」議論が行われた。その概要を紹介する。

火葬場を取り巻く諸問題

奥村 大都市を中心に火葬場が不足し、火葬場の大型化が進んでいます。こうした傾向は今後も続きます。火葬場の管理も難しくなり、技術職員の拡充も課題です。墓地埋葬法では、「火葬場管理者」の設置が定められていますが、技術的なことは専門家に委ねられることとなりますので、大型化が進めば、技術者による「管理」が大きな課題となります。これまで2回の講習会を経て、民間資格として、31名の方が総括火葬技術管理士に認定されました。

総括管理士は、社会的要請に応えて資格を取られ、場長である管理者を補佐する技術責任者です。こうした制度は、廃棄物処理施設でも、水道施設でも設けられ、定着しています。本日は、総括火葬技術管理士の方々にご参加いただき、これからの火葬場運営のあり方、その役割について議論したいと思います。

当協会では、厚生労働省から補助を得て、「火葬場の大型化・高度化と火葬需要を踏まえた適切な料金設定の在り方に関する特別研究」を行っています。今、火葬場の大型化・運営の高度化が進んでおり、専門家による高度な運営が行われ、火葬場のイメージが一新される状況となっています。火葬場が住民の理解を得て、高度なサービスを持続して行っていくためには、長期計画が策定され、住民や議会の理解を得て、必要な費用がきちんと把握され、公会計として整備されることが総務省の指導により進んでいます。私共の研究では、こうした動きを踏まえて、適切な提案をしていきたいと考えています。まず、喜多村さんから、最近の火葬場をとりまく諸問題についてお話をいただければと思います。

喜多村 2つの側面から論じたい。1つ目は、ハードの面です。施設の大型化は、火葬場運営が事業化してきたということです。昨今の立派な施設と広大な敷地を見れば、計画性、合理的経営、知識の高度化が求められることは容易に想像されます。国民意識でも実行率でも、わが国は火葬率100%ですから、火葬場は未来永劫必要です。施設は老朽化し、陳腐化しますから、火葬場の計画は、整備、健全な運営、しかるべき時期での建て替え、この3段階を適正に行っていくことです。火葬場の計画とは、「整備・運営・立て直しの長期サイクル」に他なりません。住民みんなの公益事業でありますから、無駄な経費使用は許されません。火葬場の運営形態は、地域性が高いですが、火葬率100%の面での共通性から、利用者すなわち遺族の負担はどのくらいが適切であるのか、「火葬場の大型化・高度化と火葬需要の増加を踏まえた適切な料金設定の考え方」として、今年、政府の資金をいただいた研究にとりかかっています。火葬場に係る総経費では、いわゆる地域対策費も無視できません。近隣の人は、地価が下がるなどの現実迷惑を被るでしょう。しかし、「無しでは済まない」施設です。福祉施設などの先行「迷惑施設」の経験を生かすことも必要です。

2つ目は、ソフトの面です。火葬の事業化は、利用者との契約の性格が明白になっていくことです。契約とは権利と義務の相互関係です。利用者からいただく代価に何が含まれているのか、分かりやすく整理しておかなければなりません。遺族にも都合がありますから、「火葬待ち」といった、顧客軽視は本来あってはならない事項です。火葬待ちが巨大規模になったのが、14年前の東日本大震災です。政府は、火葬場間の相互協力、「広域火葬計画」の実行性を強く要求しています。都道府県の主導が求められていますが、火葬場の運営実務に携わる人も平素から準備が求められます。

利用者との法律関係では、お骨の所有権といったことも整理しておく必要があります。歯に使われていた貴金属などの回収に関わりますし、また、いわゆる残骨灰などの最終処理の透明性にも関係します。

昨今、海洋散骨と樹木葬が広がっていますが、その前提として焼骨をさらに粉状に砕くことになります。それを誰がするのか、火葬場もその後の墓地も業の許可が必要です。他人の依頼を受けて粉骨作業をするのが、法の適用外というのはいかがなものかと思われます。もっとも、火葬場が事業の一部として、その要望に応えるのであれば問題は解決すると思われます。

この関連では海洋散骨の場所も法律上の「墓地」の一種であり、許可を要するものと考えています。氏名を刻んだ石塔を建てて骨壺を安置する「墳墓」は、今後少数派になり、散骨のほか樹木葬、合葬墓などの選択が増えています。これらの場合、お骨は、ここらへんに眠っているはずとなります。その意味で、その場所を記録し、将来に向けて遺族に情報提供することが望まれます。その情報の管理や提供は誰がすべきか。火葬率100%のわが国ですから、火葬場がそうした記録に関する事務を担うのも有力な考えです。

最後に、職員の労働環境や処遇の改善について、労働契約の近代化として取り組む必要があります。個人との最後のお別れの場です。従業者には、他業種以上に、国民の宗教観、地域の伝承・風俗に通じていることが求められますから、それにふさわしい能力保持が前提となります。いずれにせよ現在の法律は制定以降80年近く、実質改正がありません。実態を踏まえ、将来を見据えた法改正を考える時期ではないでしょう。

横田 火葬場も燃焼行為を行う場ですので、地域の理解を得る上でも大気汚染、悪臭の問題、ダイオキシン、水銀、六価クロムなどの有害物質の適切な管理を行う必要があります。

まず、ダイオキシンについてです。京都大学の武田信生先生らの調査によれば、火葬場の排ガス中に含まれるダイオキシン類濃度は新設の火葬場に対する指針値1・0ナノグラムTeq/ノルマル立方メートル で、これをクリアできた火葬場は4施設中2施設。その2施設は2002年以降に建てられたもので、バグフィルターに加え、触媒装置または活性炭処理設備のいずれかが付設されていました。1・0ナノを超えた集じん装置なしの2施設は昭和50年代の建設ですが、既設炉の指針値5・0ナノグラム はクリアしていました。0・096ナノと低濃度のサンプルもありましたが、これは同じ炉でも遺体や副葬品によって燃焼条件が大きく変わり、そのためのダイオキシン類濃度が大幅に変動することがありうる一例です。残骨灰中のダイオキシン類は非常に低いですが、集じん灰は高濃度であり、都市ごみ焼却炉の飛灰と同じレベルで何らかの処理対策が必要と思われます。

次に、水銀です。先程の調査で、排ガスの水銀濃度は1サンプルが8マイクログラム/ノルマル立方メートルで、他の多くは定量下限値未満でした。さらなる6施設の調査で平均11・5マイクログラム/ノルマル立方メートルでした。京都大学の高岡昌輝先生によれば、2012年に0~92・2マイクログラム/ノルマル立方メートル、103件の平均で10・3マイクログラム/ノルマル立方メートル、最近の調査でバグフィルター前の水銀濃度が、女性の場合35+-55マイクログラム/ノルマル立方メートル、男性で15+-20マイクログラム/ノルマル立方メートルでした。都市ごみ焼却炉での新設の排出基準は30マイクログラム/ノルマル立方メートルですから、火葬炉に水銀の排出基準はありませんが、この値を目標にするならば、触媒装置あるいは活性炭吸着設備による水銀除去が必要です。

水銀の挙動は、水銀連続分析計による経時変化から、歯科アマルガム由来による金属状水銀の発生が大きく寄与していることが分かります。残骨灰中の水銀は問題ありませんが、集じん灰中の水銀については、含有量では基準値以下でしたが、溶出量は基準値を超える場合があり、取り扱いには注意が必要です。

次に、六価クロムです。武田先生らの4火葬場の調査で、灰中の六価クロムに関しては、含有量基準(250ミリグラム/キログラム)を超過するケースが見られ、溶出量試験では全サンプルで基準の180~1200倍の溶出量が検出されました。武田先生のさらなる調査で、バグフィルター高度化排ガス処理は、集じん機なしの場合に比べて78~99%程度の排出抑制効果があることが推定されました。

残骨灰、集じん灰中の六価クロムが土壌汚染防止法の含有量基準(250ミリグラム/キログラム)を超過したのは10検体中3検体のみでしたが、溶出量では基準(0・05ミリグラム/リットル)を10~1900倍の高い濃度で超過しました。六価クロムは特に灰からの溶出量に注意する必要があります。

灰中の六価クロムの由来としては、ステンレス架台や炉内耐火物のクロムの酸化によるものと考えられ、特にステンレスの架台をクロムフリーの材料に変更することにより、六価クロム量は大幅に減りましたが、依然として高いケースもありますので、バグフィルターなどによって火葬炉外への排出を抑制し、別途灰の処理を検討する必要があります。

火葬従事者の働く場である火葬場内の有害物質に対する影響を評価するためには、これら有害物質の作業環境における濃度測定が不可欠です。測定の対象物質としてはダイオキシン、水銀、六価クロム以外に酸性ガス、粉じん等が挙げられます。デレッキ操作や火葬後の整骨、収骨、清掃作業において粉じん暴露の危険性がありますが、火葬時の作業環境測定のデータは多くありません。高岡先生の調査によれば、1990年以前建設の施設や新型の炉を備えた施設も含めて粉じん中の遊離ケイ酸はいずれの調査とも認められませんでした。つまり粉じん計による作業環境の測定からは、いずれの施設も第1管理区分と判断される状態でした。火葬炉周囲においては、炉運転前に比べて清掃時、炉運転中、収骨時に粉じん濃度が高くなる現象が認められますので、適切な管理を行う必要があります。災害事故の防止、定期的な測定と適切な職場の管理、清掃が不可欠です。

大澤 仙台市葛岡斎場は2002年4月、市街地西部の丘陵部にある葛岡墓苑隣接地に開設された仙台市唯一の火葬場として20年以上にわたり大切な人との別れの場を支えてきた施設です。施設の敷地面積は約4・2ヘクタール。鉄筋コンクリート造、地下1階・地上3階建て、延べ床面積は約9400平方メートルです。火葬炉普通炉18基、大型炉2基の計20基、ほうい炉2基が設置され、排気は2炉一系列方式です。各部屋は、告別室6室、収骨室6室、待合室20室で部屋を個別に配置することにより、ご遺族のプライバシーが守られ、より厳かな中で故人をお見送りすることができます。火葬料金は、仙台市民9千円、市民以外が2万7200円です。19年10月に一度だけ火葬料金が見直され、市民以外の料金が値上げされました。今後、火葬料金の見直しが必要ではないかと感じています。

25年度9月の火葬件数は889件で、待合室の利用は洋室486件、和室145件でした。利用者の高齢化もあり、椅子席である洋室の希望が増えています。利用者の要望を踏まえ、半分和室を残した形の和洋室化の対応ができないかと検討しているところです。

火葬は予約制で、9時から14時30分までの時間帯に最大48件の火葬が可能です。予約の締め切りは、火曜日の16時までとなっています。当日飛び込みの火葬の対応は、予約状況を確認し、可能であれば、ご遺族の希望の時間帯に受け入れできるよう調整しています。

02年度の火葬件数は5369件でしたが、24年度には1万1099件と20年余りの間に約2倍にまで増加しています。今後とも増加が予測されています。

施設の運営と日常的な維持管理は、指定管理者である仙台市公園緑地協会と太陽築炉グループが行っています。23名の職員が配置されており、設備や掃除など一部業務は外部委託で対応しています。

ばい煙やばいじん、臭気、そしてダイオキシン類への対応として、再燃焼炉とバグフィルターが設置されています。微粒化されたばいじん等を吸着し、周辺環境の負荷を最小限に抑えています。また火葬炉の自動化によって、作業の効率化と職員の労働衛生の確保も実現しています。

仙台市唯一の火葬場ですので、故障により業務に支障をきたすことがないよう、日常点検と定期的な点検により、業務に影響が出ないようスケジュール管理を行い、安定的な運営を心掛けています。

また、副葬品の削減にも取り組み、年に2回の葬祭業者との意見交換会で、副葬品は少量の生花や食べ物、数枚の写真や手紙程度とお願いしています。先日ニュースで札幌市斎場の10円玉問題、いわゆる旅銭の話題を目にしました。葛岡斎場も20年以降は葬祭業者とご遺族の理解を得て、ほぼゼロとなっています。

施設の老朽化と火葬件数の急増により、火葬スケジュールの調整や人員管理が非常に難しい状況にあります。日々感じていることは、職員の高齢化と若手不足による技術継承問題です。限られた経営資源の中で、いかに良質なサービスを提供し続けるかが、今後の大きな課題です。

これからの火葬場運営には、単なる設備更新だけでなく、技術革新や火葬に対する市民の意識の変化に対応していく必要があります。

葛岡斎場は、単なる火葬施設ではなく、故人を見送るための公共施設です。葛岡斎場の基本理念である故人の尊厳を最大限に尊重し、ご遺族の心に寄り添った対応と安全で安心な公営斎場としての役割を果たし続けていきたいと思います。

大菅 阿賀北葬斎場の火葬炉は現在5基で、告別室、収骨室が2部屋ずつの待合室が5部屋。管轄の人口は11万人で、年間火葬件数は1400件前後。1日の火葬件数は最大10件で、平均5~6件となっています。職員数は社員が4名、パート職員の6名で、男女比では男性3名、女性3名です。公害防止措置については、渦流火導孔とバグフィルター集塵方式を採用し、排ガス濃度と騒音の測定を年1回実施しています。専業者によって残骨灰回収と適正な処理が行われています。

労働衛生や勤務状況については、年1回の健康診断、保護具着用の徹底、熱中症対策として職員全員に1日1本飲料水の配布、スポットエアコンの導入などを実施しています。1月ごとにシフトで担当者を割り振り、1人は公休になるため常時は5人で対応しています。

奥村 すでに火葬技術管理士は1400名を超えています。管理士会の活動について、会長の玉寄さんからお話をお願いします。

玉寄 03年11月から火葬技術管理士2級の通信教育が始まり、翌04年10月に、資格を持った火葬場に勤務する火葬従事者の中から志を持った有志が集まり、任意団体として管理士会がスタートしました。創立10年目の14年度には法人格を取得して一般社団法人として再スタートし、現在は発足後21年目、法人として11年目になります。会員数は84名で、内訳は総括火葬技術管理士が8名、1級の火葬技術管理士が59名、2級の火葬技術管理士が9名、賛助会員・企業が12社となっています。

設立目的は、定款で「火葬場の近代化の促進並びに火葬技術管理士の資質の向上と社会的地位の向上を図り、もって火葬事業の健全な発展に寄与すること」と定めています。協会は、2つの目的である「資質の向上と社会的地位の向上」について、真摯に取り組んでいます。この2つの目的をテーマに、定期的に①会員向けのアンケート調査とその分析、結果の発表②日本火葬フォーラムの開催③関係省庁や自治体への訪問などのさまざまな活動を行っています。21年のコロナ禍においては、アンケート調査を実施し、その分析により、「生活と環境全国大会」の企画に加えていただき、コロナ禍での火葬業務についてウェブ上で発信したこともあります。今後の課題については、会の運営存続が最優先です。「火葬従事者の団体」、当会のような目的に持った団体は他になく、従事者同士の情報交換が極めて少ないという現状があります。その役割を担う当会の運営財源は会員からの会費のみで、当会の理事メンバーの資金あるいは労働時間に頼った運営を余儀なくされている状態です。事務的な手続きも、自身の業務、自社の経営を続けながらの作業となり、苦しい運営が続いています。この問題の解決を進めずに定款にある目的の

達成や情報交換などの活動を続けていくと、財力・体力・時間を奪われ、消耗し、組織の存続すら危うくなるという状況です。現在は火葬場従事者として使命のみで運営していますが、せめて事務機能だけでも日本斎苑協会や母体である日本環境衛生センターのお力をお借りしたいというのが本音です。

火葬技術者の役割について

奥村 今後の火葬場の課題、火葬技術者、特に総括火葬技術管理士の役割について考えてみたいと思います。

大澤 現在、火葬場は多くの課題に直面しており、現場で業務に携わる者として、日々それを実感しています。特に高齢化社会の進展に伴う火葬件数の増加は、火葬場の運営に大きな影響を与えています。希望の日時に火葬することはできなくなり、火葬待ちの長期化はますます増えていくでしょう。加えて、東日本大震災の経験から、災害時の対応力強化として近隣火葬場との連携は特に重要だと感じました。これ以外にも、火葬従事者の高齢化による技術継承の問題、火葬施設の老朽化とそれに伴う環境対策など、複合的な課題が山積しています。これらの課題に対応していくためには、火葬業務に精通し、地域特性や現場の実情を的確に把握できる専門性の高い職員の育成が不可欠です。特に、火葬技術者の中でも「総括火葬技術管理士」に対する期待は今後ますます高まっていきます。総括火葬技術管理士は、実務経験に加え、幅広い知識と技術を有する職員であり、現場のマネジメントを担う責任者として火葬管理者を補佐する役割を果たします。火葬場の運営や各種計画の立案・検討にも関与できる人材として位置付けられ、火葬場の安定的な運営にとって極めて重要であり、現場の技術力と組織運営の両面から支える柱となるでしょう。

また、火葬場の運営においてはヒト・モノ・カネといった経営資源が限られている中で、いかにして良質なサービスを安定的に提供し続けるかが問われています。そのためには、現場の技術者も単なる作業者としてではなく、経営的視点を持って業務に取り組む必要があります。例えば設備の更新計画や人材育成、業務効率化のための改善提案など、技術者自身が主体的に関与することで、火葬場全体の質の向上につながります。

今後、直面する課題はさらに複雑化・多様化していくことが予想されます。その中で、総括火葬技術管理士が果たすべき役割は、単なる技術の継承にとどまらず、組織の中核としてのリーダーシップを発揮し、持続可能な火葬場運営の実現に向けて貢献することが求められています。これからの火葬場を支えるためには、こうした人材の育成と活用が急務であり、現場の声を反映した支援体制も重要な課題となると思います。

大菅 当斎苑の当面の課題としては、一つは、空調機器が悪いことによる効率の良い熱中症対策。2つ目は、丸12年が経過している施設の修繕費などの予算と運用。3つ目は昼食(休憩時間)の確保です。少し広く考えますと、施設の整備管理、修繕費など予算とのバランス、労働衛生の改善が必要だと思います。指定管理者制度により行政の予算枠と件数の把握ができないため、必要最低限の人数で昼食(休憩)が取れない状況、火を使用する作業であり、年々暑さを増す熱中症対策など、職場環境を良くしていくことではないかと思います。

それ以外にも、葬祭業者の大多数の方が火葬や手続き申請に関することを理解していない気がします。火葬場を利用する全ての方との情報共有および火葬について理解いただくこと、安全で働きやすい職場環境の整備、火葬技術の向上、さらにはこれを周囲に伝え指導していくことが火葬技術者に求められる役割ではないかと思います。

玉寄 総括火葬技術管理士の授業内容は多岐で、すばらしく、現場で火葬業務に取り組んでいる者にとっては興味深い内容でした。この資格取得こそ、「火葬技術管理士の資質の向上と社会的地位の向上を図る」に当たると感じています。これからの火葬場はもっと深くインフラの地位を獲得する必要があると改めて感じました。電気や水道、ガス、道路などのインフラと同様に、火葬業務と火葬技術者の存在を内外に認識してもらう必要があります。

総括火葬技術管理士をはじめ火葬技術管理士、火葬従事者は本業界でのゼネラリストとしての資質を高めなければならないと思います。もちろん炉のオペレーション技術力を筆頭とするわけですが、その他にも、火葬炉の仕組みを理解し、緊急時のメンテナンスや非常事態に対する対処法を体得しておくべきです。また、現在の行政中心の火葬事情を理解し、環境問題や火葬に関する細部にわたる知識を理解した上で、国の歴史、宗教的な流れ、各国の葬儀事情を知っておかなければならないと思います。これらの知識を得た上でないと、会葬者への対応も形ばかりのものになってしまうと思います。火葬場の大型化や施設のマネジメント力、火葬待ちでレベルの高いオペレーションが求められる状況においても、お話しした基礎力のようなものが不可欠になると思います。

管理士会としては、会員や関係者がさらに結束する必要があります。社会的インフラとして認識してもらうには、存在価値を示す必要があるからです。これまで弱者労働者として扱われてきた場面も多く、弱者の立場に止めておくために、各所の情報交換を遮られてきたのではないかと思うくらいです。必要な業務環境を整え、法的整備を進め、適切な労働単価を定めて、斎場に必要な資格者、例えば規模によって運営に必要な火葬技術管理士の人数を定めるなどを明確にし、その上で火葬料金などの具体案を定めてもらうことも重要だと感じています。

総括火葬技術管理士については、火葬場管理の技術責任者という立ち位置を確立することが重要だと思います。また、これからの火葬場のあり方を議論する最先端の責任者であるべきだと感じています。現在、31名の総括火葬技術管理士に、21年の歴史の中で生まれた延べ1千名を超える1級、2級の火葬技術管理士の情報をまとめて、総括火葬技術管理士の論文のような形で発信することができるのが、近い将来の理想と考えています。

喜多村 火葬場運営の責任者は誰なのでしょうか。まず最高責任者です。自治体の直営であれば明確です。例えば、県立高校であれば知事、市立中学校であれば市町村長、では、火葬場ではどうか。大型化に伴い、市町村立でない火葬場が存在します。政府は火葬場の運営主体として、自治体の他に公益法人と宗教法人などを挙げています。あくまでも行政庁による許可事業です。法律改正により知事の許可権が市長に移譲されましたから、市営の火葬場では市長が自身に許可することとなりますが、そこには許可が介在していることを忘れてはなりません。そして許可というからには、法律が求める公益の趣旨を逸脱することがないよう、地域の独自色も加味しつつ、許可権者としての明確な基準を条例で定めるべきです。行政行為はルールに即して行われる、これが民主制の行政手法です。許可の有期、更新制の導入などは当然必要ではないでしょうか。その一方で、法律の5条で、住民の側である遺族は市町村長から火葬許可を得るべしとなっています。かってに裏山に近隣住民が集まって、薪を積み上げて焼く、いわゆる「野焼き」は許されません。しかし、国民は100%火葬要望です。住民の管理は、戸籍を含め市町村の責務です。市町村長の火葬許可にはその裏腹として、住民の火葬要望に応えられる体制を整える義務があるはずです。その一つが自ら火葬場を整備することです。そうでない場合は、住民に便宜を図る。法律13条は、個々の火葬場は、正当な理由なく火葬要望を断れないとしています。この条項も活用しながら、住民が火葬できない、といったことが生じないようにする責務が市町村長にあると思います。

さて、ここで料金問題が絡んできます、火葬場の長期健全運営計画により収支バランスを保つ上での必要料金が算出されます。それをそのまま利用者に課すかどうかは別問題です。火葬場運営経費の一部を公費負担すれば、利用者への賦課料金を安くできます。ただし、この手法が通用するのは直営火葬場の場合です。公益団体の火葬場、他自治体の火葬場を利用する際はどうするのか、全国的課題となってきています。共通する考え方を見出す必要があると思っています。

なお、社会保険からの「葬祭料支給」があり、亡くなった人が加入していた公的医療保険から5万円とか、7万円が支給されます。葬儀の簡素化が進み、火葬と合葬墓への納骨という組み合わせの費用を賄える程度に増額すること、その請求を火葬場が代行することは考えられないでしょうか。出産費用の増額と産院の代理受領化が参考になると思われます。

もう一つの側面は、運営実務の責任者です。火葬場は技術面でも管理面でも専門化、高度化が著しく進行しています。これは全国的傾向です。また、指定管理などの形態で運営を受託する事業者も多数存在しています。火葬技術士の最上級資格として総括火葬技術管理士の育成が開始されています。火葬場運営は、伝承ではなく、科学を踏まえて行われるようになってきています。火葬率100%で世界の先端を進んでいる日本の火葬は、そのことに安住することなく、より満足感の高い葬儀形態を探求し、後世代に伝えていくこと、その努力を怠ってはならないと考えます。

横田 わが国で、火葬炉から出る排ガスは現在のところ、大気汚染防止法の対象外ですが、ばいじん、塩化水素、硫黄酸化物などの酸性ガスやダイオキシン類、水銀などを含んでいることがこれまでの研究から明らかです。自治体によっては、それぞれの暫定目標値を定めている火葬場もあります。火葬炉の排ガス処理においては、高い除去率(98%以上)が期待できるバグフィルターや電気集じん機が設置されている新型火葬炉は全体の2割程度で、さらに消石灰噴霧や湿式洗煙等の酸性ガス処理がなされている炉は数カ所あるのみです。今後の火葬場の技術的側面から特に望まれる点を3つ挙げます。

一つは、ダイオキシンおよびばいじん抑制、さらに水銀の防止対策のためにバグフィルター装置に加えて触媒や活性炭吸着装置を設置することが望ましいことです。

もう一つは、排気系列は1炉1形式とすることが望ましいことです。燃焼炉と後段の排ガス処理は連動しているので、複数の炉からの排ガスと排ガス処理工程を束ねることによって、一つの排気装置で適正に運転管理することは困難です。

3つ目は、火葬場における煙突は高くすればするほど排ガスの拡散効果も増大するため、煙突遮蔽物は可能な限り設置しない方が望ましいことです。

玉寄 大型化し、近代化し、また広域化する火葬場の管理が求められている今、総括火葬技術管理士は、高いレベルへ変化する時代に合わせた技術と社会性を持ち合わせなくてはならなくなるだろうと感じました。火葬技術管理士会としては、こういったシンポジウムなどを通じて、次の時代につないでいけるような活動を引き続き継続していきたいと感じています。

奥村 今回のまとめです。1点目は、火葬場は大型化し、近代化し、公害のない、地域に理解される施設へ変わりつつあり、その方向は変わらないということです。

2点目は、こうした近代的な火葬場を管理し、住民の理解を得る施設へ運営していくのが総括火葬技術管理士であり、火葬技術管理士であるということです。総括火葬技術管理士は、火葬場の管理の技術責任者として市町村の行政当局、地域住民に説明し、理解を求めていかなければならない重要な役割を持っていると思います。

3点目は、火葬技術者は火葬場の管理、改善、新規火葬場の設置を含め、発言し、提案し、地域住民のお付き合いの中核として積極的に発言していかなければならないと思います。今日の議論がこれからの火葬場での皆さんのお仕事に生かされることを祈念して、シンポジウムを終わりたいと思います。

日本斎苑協会主催全国火葬情報交換会シンポジウム 「大型化し、高度化する火葬場の設置管理運営と総括火葬技術管理士の役割について」_奥村氏
奥村氏
日本斎苑協会主催全国火葬情報交換会シンポジウム 「大型化し、高度化する火葬場の設置管理運営と総括火葬技術管理士の役割について」_喜多村氏
喜多村氏
日本斎苑協会主催全国火葬情報交換会シンポジウム 「大型化し、高度化する火葬場の設置管理運営と総括火葬技術管理士の役割について」_横田氏
横田氏
日本斎苑協会主催全国火葬情報交換会シンポジウム 「大型化し、高度化する火葬場の設置管理運営と総括火葬技術管理士の役割について」_玉寄氏
玉寄氏
日本斎苑協会主催全国火葬情報交換会シンポジウム 「大型化し、高度化する火葬場の設置管理運営と総括火葬技術管理士の役割について」_大澤氏
大澤氏
日本斎苑協会主催全国火葬情報交換会シンポジウム 「大型化し、高度化する火葬場の設置管理運営と総括火葬技術管理士の役割について」_大菅氏
大菅氏