オルタナティブ・テクノロジー(110) 下水道アドバイザー 神林章元 カナデビアに聞く メタネーションの新たな展開(その2)

前回はバイオメタネーションとは何か、開発の経緯、海外の実用化事例などについて伺いました。今回は欧州のグループ会社主体からわが国回帰の第1号としての取り組みに向けた国土交通省の下水道革新的技術実証事業(B‐DASHプロジェクト)におけるFS調査事業と今後の展開について伺います。

*  *  *

――採択されたB‐DASHプロジェクトの調査事業概要について聞かせてください。

2024年度に採択されたB‐DASH FS調査事業において、パイロットプラントによるフィールド実験等を日本下水道事業団との共同研究体で実施しています。フィールドは鳥取市の秋里下水終末処理場で、水処理能力は最大7万2400立方メートル/日規模の標準活性汚泥法の処理場です。平均流入水量は4万4500立方メートル/日程度です。実験施設は処理場内に設置し、消化ガスの一部をCO2源とし、水素は購入したガスを使って、Ex-situ型バイオメタネーションによりメタンを生成します。

実験施設の中心設備・メタン化反応槽は写真のようで、反応槽に満たした反応液(消化汚泥)に原料となる消化ガスと水素を注入し、生成ガスは上部から取り出します。消化ガスの処理量は12ノルマル立方メートル/日以上、うちCO2から変換されるメタン生成量は4・8ノルマル立方メートル/日以上です。

――1年間の成果はどうでしたか。

24年の検討では四季のうち3季節を通じた運転も行い、季節変化への対応は確認できています。また負荷変動運転、土日休みを想定した間欠運転といった原料の変動についても確認しましたが、いずれも安定して95%以上のメタン濃度および高い生成速度を維持し、次の段階に進む道が開けました。25年度も引き続きFS事業を実施中であり、取り組みを続けて社会実装につなげたいと考えています。

――今後の展開について聞かせてください。

ガス業界のビジョンでは、合成メタンの導入目標が2030年に1%ですが、50年には主流になると想定されており、水素、アンモニアとともに低炭素水素燃料ガスが大半を占め、カーボンクレジットなどを利用してゼロに計算されるCN(カーボンニュートラル)‐LNG(液化天然ガス)を除いてLNGの使用はなくなるという変遷イメージが描かれています。地産地消型のバイオメタネーションも合成メタンの一翼を担いたいと考えています。下水処理場とバイオメタネーションの親和性は高く、消化ガス中のCO2と再生可能エネルギーで電気分解された水素から生成されるバイオ合成メタンの創エネ効果は社会的ニーズがあると思います(図参照)。

――全国展開を図る上でクリアすべき問題は何だとお考えですか。

化石燃料の燃焼機器からCO2を回収するより、消化ガスに含まれるCO2を利用することで濃度が高く、回収利用に係る制約もないため使いやすいメリットがあります。既存施設にメタン化反応槽等を外付けするだけなので広大な敷地は必要ありません。運転経費の多くを占める水素を製造するための電力を廃棄物焼却発電や太陽光パネル等の自家発電で賄えれば、安価なコストでカーボンニュートラルが実現できる点でも、市場性は高いと思います。

――最近は、汚泥だけでは力不足と生ごみ、除草・剪定枝等の地域バイオマスとの混合消化を進める動きがあります。また産業廃棄物処理業界や清掃行政でも、可燃ごみを機械分別して発酵適物は消化して残った廃プラスチックや古紙等の分別ごみの火力を上げる事例も増えています。これらの動きにも対処されますか。

ご指摘のようにバイオガスの増量を図る取り組みも行われています。この技術は、バイオガスを発生するメタン発酵の種類を選ばず、中温や高温、湿式や乾式といったいずれの反応形式にも適用可能であり、もちろん地域バイオマスを投入してガス発生量を増量した場合にも対応できます。

――最近は再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)事業者が下水道事業者から消化ガスの供給を受け、ガスエンジンと発電機を駆動するビジネスモデルも増えています。御社のように総合的な事業展開ができる会社なら、さらに一歩進めて、消化タンク、CN自家発電機、水素生成装置、メタン化反応タンク、ガスホルダー、ガス会社への接続ユニットを一括設置し、下水道事業者からプレ脱水汚泥の提供を受けるというビジネスモデルも可能と思いますが。

そこまで現時点で考える段階ではないかもしれませんが、まず消化タンクを設置している処理場へ新たなサービスを提供するために、検討を重ねていきたいと考えています。

――午年歳男の私もついに7周目に入りました。今日のお話を伺って、少なくとも2030年の米寿まで元気で、合成メタン1%実現を見たいと思いました。

オルタナティブ・テクノロジー(110) 下水道アドバイザー 神林章元 カナデビアに聞く メタネーションの新たな展開(その2)_下水道アドバイザー 神林 章元
下水道アドバイザー 神林 章元

オルタナティブ・テクノロジー(110) 下水道アドバイザー 神林章元 カナデビアに聞く メタネーションの新たな展開(その2)_青田さん(左)と林さん
青田さん(左)と林さん

オルタナティブ・テクノロジー(110) 下水道アドバイザー 神林章元 カナデビアに聞く メタネーションの新たな展開(その2)_写真 メタン化反応槽
写真 メタン化反応槽

オルタナティブ・テクノロジー(110) 下水道アドバイザー 神林章元 カナデビアに聞く メタネーションの新たな展開(その2)_図 今後の取り組み
図 今後の取り組み

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