GXロードマップ実現へ「特例国債」含め制度設計を 自然エネ協議会が緊急提言

34の道府県と約120社の企業で構成される自然エネルギー協議会の飯泉嘉門会長(徳島県知事)は2日、「『勝負の10年』GXロードマップ実現へ」と題する緊急政策提言を、環境省の上田康治総合環境政策統括官に提出した。

それによると、政府の「GX実行会議」で示された10年のロードマップを絵に描いた餅で終わらせることなく着実に実行するには、機動的な財政の拡充が重要で、それは財源を世界標準に合わせることで可能になると指摘。その上で、脱炭素化の取り組みは2050年で終了するものではないことを踏まえ、受益と負担の観点から将来世代も脱炭素の便益を享受する「特例国債」も含め、制度設計を検討するよう求めている。また、「GX経済移行債」(仮称)により調達した資金はエネルギー対策特別会計に区分されるが、その歳出はエネルギー需給勘定のエネルギー需給構造高度化対策費に限るよう求めている。

提言ではまた、政府の「GX実現に向けた基本方針」において、第6次エネルギー基本計画に沿った再生可能エネルギーの最優先・最大限導入の原則を堅持し、今後の対応で「再エネの主力電源化」を筆頭に記載するよう求めている。

さらに、23年度から試行的に開始される「GXリーグ」における排出量取引制度は世界標準を満たしていないと指摘。企業の自主努力だけに委ねず、また26年度の本格稼働を待つことなく、相互主義の観点からもEUの炭素国境調整メカニズムなどに対応できる国際水準の制度設計を早期に検討するよう求めている。

そのほか、今後のカーボン・クレジット市場の創設に向け、昨年9月末に開始された東京証券取引所における「J‐クレジットの取引実証」の結果と対策も早期に示すよう求めている。

一方、環境省の「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金」は、計画以上に事業が進捗して単年度交付申請額を超えた場合、総額で超過していないにもかかわらず、超過分が総額からカットされるほか、計画内に環境省事業がある場合も総額からカットされると指摘。脱炭素先行地域は初の試みでドリルの先端でもあり、事業の妨げとならないよう複数年流用できる内容に交付要綱を見直すよう求めている。

また、公共施設に導入した太陽光発電設備で発電した電力を自ら使う場合、原則としてPPA(電力購入契約)等により設備を導入し、加えて遠隔地からの自己託送では、いったん小売事業者に売電した上で改めて買い戻さないと交付対象にならないと指摘。このため、手続きが煩雑で余分な費用が発生することから、地域の実情に応じた導入も可能とすることを求めている。

さらに、「地域との共生」は再エネの普及・拡大に不可欠で、その決め手は「地域へのインセンティブ」であると指摘。その上で、「電源立地地域対策交付金」は地域への理解促進や地域振興にも優れており、再エネ電源もその対象とする検討を求めている。

GXロードマップ実現へ「特例国債」含め制度設計を 自然エネ協議会が緊急提言_環境省の上田統括官(右)に緊急提言を提出した飯泉会長
環境省の上田統括官(右)に緊急提言を提出した飯泉会長