環境省 2025年度 廃棄物処理・資源循環関連重点施策の概要 循環経済の実現を国家戦略に施策推進 持続可能で強靱な廃棄物処理体制構築も

環境省は2025年度、循環経済(サーキュラーエコノミー)の実現を国家戦略と位置付け、使用済み太陽光パネルのリサイクル制度の整備に向けた検討を進めるとともに、昨年成立した再資源化事業等高度化法に基づく先進的な再資源化事業等の認定制度の円滑な施行に向けた施策などを推進する。一般廃棄物処理施設および浄化槽については、災害時にも確実に機能することが求められることから、整備・更新を進めて持続可能で強靱な廃棄物処理体制の構築を目指す。以下に25年度の廃棄物処理・資源循環関連の主な重点施策および予算(案)の概要を紹介する。(かっこ内は前年度当初予算額)

【太陽光パネル、小型家電等の循環資源利用高度化の促進】〈一部エネルギー特別会計(エネ特)〉3億8千万円(2億5100万円)

リサイクルシステムの統合強化による循環資源利用の高度化促進に取り組む。具体的には家電・小型家電等、自治体・小売り・建設現場における回収量最大化とルート開拓、違法な廃棄物回収業者対策を進める。

また国内の資源循環体制の構築に向けた再エネ関連製品およびベース素材の全体最適化実証事業として、▽再エネ関連製品やベース素材の省CO2型のリサイクル技術向上に向けた実証▽太陽光パネルのリサイクルに係る情報および資金を管理するためのシステム構築▽デジタルを用いた脱炭素・再生材証明の構築による未利用資源の活用大成の構築に取り組む。

【再資源化事業等高度化推進事業】1億9500万円(新規)〈24年度補正〉2億円

再資源化事業等高度化法に基づき、製造側が必要とする質と量の再生材が確実に供給されるようにするとともに、資源循環産業の発展を目指す。そのために25年度当初予算で、①高度再資源化事業計画等に係る認定審査の業務等②国や地方自治体が指導監督を行うための各種マニュアル作成を支援する。24年度補正予算では、再資源化の実施の状況の報告および公表システムの構築に向けて、①同法に基づく定期報告制度の情報受領・公表のためのシステム構築のための構想・企画等②製造業と廃棄物・リサイクル業のマッチング支援のための方策や必要なシステムの企画を行う。

【先進的な資源循環投資促進事業】〈GX推進対策費〉150億円(50億円)〈3年間で300億円の国庫債務負担〉

先進的な資源環境技術・設備の実証・導入支援によりグローバルで通用する資源循環投資の実現を目指す。具体的には、①CO2の排出削減が困難な産業の排出削減に大きく貢献する資源循環設備や、②革新的GX製品の生産に不可欠な高品質

再生品を供給するリサイクル設備への投資により、循環経済(CE)への移行と資源循環分野の脱炭素化の両立を推進するとともに、わが国産業のGX実現を支えることを目指す。

【プラスチック資源・金属資源等のバリューチェーン脱炭素化のための高度化設備導入等促進事業】〈エネ特〉42億8千万円(37億6100万円)〈24年度補正〉17億円。

脱炭素型のリサイクル設備・再生可能資源由来素材の製造設備等の導入支援を行う。具体的には、①プラスチック資源循環促進法が22年4月に施行されたことを受け、自治体や企業によるプラスチック資源の回収量の増加、再生可能資源由来素材への需要拡大の受け皿を整備。そのために省CO2型プラスチック資源循環設備への補助②再エネの導入拡大に伴って排出が増加する再エネ関連製品(太陽光パネル、リチウムイオン電池等)や、金属資源等を確実にリサイクルする体制を確保。そのために金属・再エネ関連製品等の省CO2型資源循環高度化設備への補助――を行う。

【脱炭素社会型循環経済システム構築促進事業)】〈エネ特〉40億円(46億7200万円)

化石由来資源プラスチックを代替するバイオプラスチック等の再生可能資源への転換・社会実装化のための技術実証等を行う。具体的には、活用可能性があり循環経済への寄与度が大きいものの、これまで脱炭素の観点を考慮した資源の活用が十分に進んでいない、①複合素材プラスチック・廃油②再エネ関連製品(太陽光パネル・リチウム蓄電池等)やベース素材(金属やガラス等)③生ごみ・セルロース系廃棄物のバイオマスといったリサイクル困難素材に着目し、これらの資源の徹底活用を包括的に支援することにより、循環経済アプローチを通じたカーボンニュートラルの実現に貢献する技術の社会実装に向けた実証を行う。

【食品ロス削減、サステナブル・ファッションおよびプラスチック等の資源循環の推進やリユースの促進等による循環型社会の実現に向けた支援】8億6200万円(7億6800万円)〈24年度補正〉1億9千万円

具体的な事業としては、①リサイクルシステム統合強化による循環資源利用高度化促進事業②プラスチック資源循環等推進事業③食品ロス削減および食品廃棄物等の3R推進事業費④使用済み製品等のリユースおよびサステナブル・ファッション促進事業に取り組む。

【地域共生型廃棄物発電等導入促進事業】〈エネ特〉16億9600万円(新規)図1

再生利用が困難な廃棄物からの熱回収等によりエネルギーを創出・活用し、かつ災害廃棄物受入等による地元自治体との協力体制の構築等を行う事業を支援する。これにより、CO2排出削減に加え廃棄物処理施設を自立分散型エネルギー源とし、創出したエネルギーの地域内での利活用を促すとともに、地域・くらしの安全・安心、防災力の向上を目指す。

また、高効率変圧器等によるエネルギー起源CO2の排出削減、交換により発生するPCB廃棄物の早期処理による災害時の環境汚染リスク低減等の政策目的の同時達成を図るため、変圧器等のPCB含有の有無の調査およびPCBに汚染された変圧器等の高効率製品への交換に要する費用の一部を補助する。

【地域の資源循環促進支援事業】9900万円(1千万円)〈24年度補正〉2億500万円

地域の特性を生かした新たな資源循環による地域経済の活性化の流れを生み出すため、意欲はあるもののCEにどう取り組んだらよいか分からない自治体に対して、先進事例に取り組むマイスターによるCEに係る現状評価やポテンシャル等の診断を行い、自治体のCEビジョン・モデル作成を支援するとともに、当該自治体の資源循環に取り組もうとする中核人材の育成、モデル実証事業を支援することで自治体を底上げし、CEへの移行を促進させる。さらに、自治体間で情報交換・相互支援を可能とする場を創設することで、各地域で生まれた循環型のビジネスモデルを全国各地に普及させる。

【海洋ごみに係る削減方策総合検討・海岸地域対策推進事業費】3億9400万円(3億9700万円)〈24年度補正〉35億2500万円

プラスチックを含む海洋ごみの総合的な回収・処理や発生抑制対策を推進するため、実効性あるプラスチック汚染条約交渉を主導し、地方自治体・民間事業者等の連携強化、国際協力を促進する。

【海洋プラスチックごみ調査研究・対策総合検討事業】2億6300万円(2億6500万円)

海洋プラスチックごみの対策検討に活用するため、プラスチックを含む海洋ごみの環境中流出量等の実態把握、生物生態系影響等の科学的知見の整備・共有を行う。

【一般廃棄物処理施設の整備】〈一部エネ特〉526億3600万円(495億1800万円)〈24年度補正〉1006億4200万円

市町村等が行う廃棄物の3Rを総合的に推進するため、自主性と創意工夫を生かした広域的かつ総合的な廃棄物処理・リサイクル施設の整備を支援する。また、災害廃棄物処理の中核を担い、地域のエネルギーセンターとして災害対応拠点となる一般廃棄物処理施設の強靱化を図る。

具体的には、▽エネルギー回収型廃棄物処理施設(焼却施設、メタンガス化施設等)▽最終処分場▽マテリアルリサイクル推進施設▽有機性廃棄物リサイクル推進施設▽これらに関する調査・計画支援事業など――の施設整備事業の一部を支援する。

【浄化槽の整備】86億1300万円(86億1300万円)〈24年度補正〉5億円

市町村が行う浄化槽整備事業に対して交付金により支援を行う。具体的には、▽環境配慮・防災まちづくり浄化槽整備推進事業▽汚水処理施設概成に向けた浄化槽整備加速化事業(いずれも循環型社会形成推進交付金等の交付率は2分の1)などの支援事業がある。25年度予算では、老朽化などにより生活環境等に重大な支障が生じる恐れのある「特定既存単独処理浄化槽」(法に基づく維持管理を実施している少人数高齢者世帯に限る)から合併処理浄化槽への転換に対する交付金基準額を増額する。また25年予算から、交付金により設置する浄化槽は、電子化された台帳への記録と台帳情報に基づく浄化槽管理者に対する維持管理の指導監督を行うことを交付要件に追加した。

【浄化槽システムの脱炭素化推進事業】〈一部エネ特〉18億円(18億円)

中大型浄化槽について、最新型の高効率機器(高効率ブロワ等)への改修、先進的省エネ型浄化槽への交換、再エネ設備(太陽光発電設備、蓄電池等)の導入を行うことにより、大幅なCO2削減を図る事業を支援する。

【リチウム蓄電池等処理困難物適正処理対策検討業務】8300万円(4600万円)図2

リチウムイオン電池等に起因する廃棄物処理の火災等が各地で発生しているため、自治体や関係事業者等と連携した効果的な対応策を検討し、実施を強化して、火災事故防止の徹底を図る。具体的には、①市区町村におけるECモール事業者と連携した処理体制の構築②リチウム蓄電池使用製品の製造事業者等における処理体制の構築③幅広い世代・ライフスタイルの市民に対する関係団体と連携した普及啓発強化――に取り組む。

【環境対策が不十分なヤード対応等の推進(産業廃棄物等処理対策等推進費】1億7900万円(同上)〈24年度補正〉1億円

産業廃棄物の適正かつ効率的な処理を促進するための調査・検討および基準設定等を行う。具体的には、①産業廃棄物や残留性有機汚染物質(POPs)廃棄物の適正処理に係る調査、感染性廃棄物や石綿廃棄物等の適正処理不適正ヤードへの規制に向けた制度構築②産業廃棄物の排出や処理状況の調査、有害物質等の検定方法の検討、合理的な規制の在り方の検討③石綿含有廃棄物無害化処理技術認定事業の推進――に取り組む。

【PCB廃棄物の適正な処理の推進等】29億4千万円(34億5700万円)〈24年度補正〉41億8200万円

PCB廃棄物の適正処理推進に向け、届出されたPCB廃棄物情報の取りまとめ、地方自治体による指導や行政代執行の実施に関する相談に対応するための窓口設置や専門家の派遣な等を行う。低濃度PCB廃棄物については、管理の強化および処理技術の評価や施設の認定を行い、無害化処理認定制度の着実な運用を図る。また、高濃度PCB処理施設の立地自治体における安全対策や環境保全対策の環境整備事業等に対し補助を行う。

【大規模災害に備えた廃棄物処理体制の検討】3億3100万円(3億3千万円)〈24年度補正〉9億5800万円

大規模災害発生時においても強靱な災害廃棄物処理システムの構築を図る。具体的には、①災害廃棄物対策に関する自治体支援および継続的な情報発信②自治体の国土強靱化対策の加速化③地域ブロックにおける広域的な災害廃棄物対策に係る連携体制の整備④全国レベルでの広域的な災害廃棄物対策に係る連携体制の整備⑤発災初期の適切な被害情報把握と現地支援――などを行う。

環境省 2025年度 廃棄物処理・資源循環関連重点施策の概要 循環経済の実現を国家戦略に施策推進 持続可能で強靱な廃棄物処理体制構築も_図1 地域共生型廃棄物発電等導入促進事業のイメージ
図1 地域共生型廃棄物発電等導入促進事業のイメージ

環境省 2025年度 廃棄物処理・資源循環関連重点施策の概要 循環経済の実現を国家戦略に施策推進 持続可能で強靱な廃棄物処理体制構築も_図2 リチウム蓄電池等処理困難物適正処理対策検討業務のイメージ
図2 リチウム蓄電池等処理困難物適正処理対策検討業務のイメージ