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田村伊三郎会長に聞く ――

――太陽光パネルリサイクル事業参入の動機は。

地元食品スーパーの減少で本業の冷凍設備設置・維持管理が厳しくなって来た。群馬県は日照時間が長く、各地で太陽光発電を行っている。当社もパネル取り付け業を行っていたが、先行投資として廃パネル処理も行うことにした。メガソーラーから大量に廃パネルが出るのはしばらく先のことだが、産廃収集業者、電気店、設備業者は群馬県内に何千社とあり、現在も住宅解体時などで発生した廃パネルを各社多く持っており持って行く先がない。「近日業務開始予定、少量でもOK」とパンフレットを配布したら問い合わせが多かった。発生現場に取りに行くことも考えている。

――施設の建設場所は。

2020年9月に渋川市のインターチェンジに近い、元自動車整備工場だった土地と建物を取得した。1年間設計に費やし、現在の規制に沿って緑地帯も1割入れた。許可申請後に機械を設置し始めたのは22年秋だった。機械設備には1億3千万円ほどかかった。

――ガラスわけーるⅢ型システムを採用した理由は。

組合を運営する環境保全サービスとは東京の展示会で知り合った10年来の付き合いで、他社に先駆けて開発した太陽パネル処理装置を見に行ったのも5年ほど前になる。

本装置の良さは枠を外す機械からガラスを剥離しバックシートを排出する機械が一貫してできるところだ。パネルの枠は取れないように頑丈にはまっており、製品により止め方がまちまちなので、確実に自動で枠を外す装置が魅力だ。連続稼働が少人数で可能なのも優れた点だ。水の使用も汚れたパネルを流すくらいなので、水処理装置も不要だ。古い建物を居抜きで使うため、配置を工夫でき、選別機の置き場など融通が利くのと安全性が高い当システムを選択した。

――施設を改良した点は。

パネルの投入方向をまっすぐ短い方向から入るよう変えてもらった。フォークリフトが入れるよう、装置の置き場を確保してもらった。

――機械は日本製か。

ガラスわけーるⅢ型システムは隣県長野県の工場で生産されている。ガラス選別機も日本製だ。為替の関係で価格差が縮小し、維持管理部品の入手を考えると国内生産が安心だ。

――県の許可は。

群馬県中部環境事務所へ許可申請したのが21年9月末だが審査に時間がかかっており、県知事の許可は間もなく下りる予定だ。理解が遅れたのはガラスの処理方法で、パネル以外の廃ガラスは通常砕いて資源にするので、太陽光パネルも砕くのではないかと思われていた。この装置は砕く破砕機ではない。掻いて剥離をする装置だ。ビデオを見せたが理解してもらえなかったようだ。担当者には単なる産廃処理か資源循環装置かの見極めを早くお願いしたい。

――出たガラスの資源利用方法は。

装置から出るガラスは尖っていないので、建材として大量に使用できる。コンクリートやブロックの骨材、地下埋設水道管の山砂の代わりなど、今後大量に出ても十分消化できる。建材なら高純度でなくても構わないので、選別コストはかからない。

――装置への要望は。

ガラスを削るローラーは特殊金属性で、メーカーの話では4~5年に1回交換する必要があり、約1千万円である。1億円かかるガラスわけーるⅢ型装置も量産化してもっと安くしないと、現状ではそれに見合うパネル数が処理できるかという問題となる。

工場の屋根で太陽光発電を行い、装置で使う電力を賄いたいが、モーターの容量が50キロワットと大きく、省エネ化と太陽光対応を進めてほしい。また電力を平準化する蓄電池が高価なのがネックだ。工場天井の照明は以前の水銀灯だが、昼に稼働させるので使わないし、LEDに交換する予定だ。

――今後の課題は。

バックシートも数が増えれば自己処理してから専門業者に販売することを考えている。再生可能エネルギーの地産地消のため、廃棄物処理法の手直しと、行政の理解が必要だ。今後10年間にどのくらい施設を建設できるかが、大量廃棄時代に対応する鍵となる。

田村伊三郎会長に聞く ――_装置全体と田村伊三郎会長
装置全体と田村伊三郎会長