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廃棄物処理業者が生き残るための脱炭素経営(36) TNFDの実務4

事業活動へのリスクや機会を明確にするLEAPアプローチ

LEAPアプローチとは

LEAPアプローチは、自然関連リスクと機会を評価・管理するために、TNFD(Taskforce on Nature―related Financial Disclosures)が提唱したフレームワークである。この手法は、企業や組織が自然環境との関係性を把握し、リスクや機会を戦略的に管理するための具体的な指針を提供する。

LEAPアプローチは、自然環境が事業活動に及ぼすリスクや、そこから得られる機会を明確にする手段である。特に、事業活動がどの地域で自然資本に依存し、または影響を与えているかを可視化する役割を担う。これにより、企業は環境に対する責任だけでなく、事業継続性に対する潜在的な脅威を把握できる。LEAPは以下の4つの段階で構成されている。

1.Locate(特定する)

企業や組織の事業活動やサプライチェーンが自然資本に与える影響や依存関係を地理的に特定する段階である。自然関連リスクは多くの場合、特定の地域や資源に依存しているため、どこでそのリスクや機会が発生しているかを明確にすることが重要だ。例えば、水資源や森林資源を利用する産業では、これらの資源が存在する地域を特定し、その変化がリスクにつながる可能性を評価する必要がある。

2.Evaluate(評価する)

特定された自然関連の依存関係や影響が、組織の活動や財務にどのように影響を及ぼすかを評価する段階である。リスクの種類については、物理的リスク、移行リスク、依存リスク、影響リスクを区分し、その重要度や影響度を定量・定性的に評価する。そして、短期的・中長期的な財務影響や、規制対応、評判リスクへの影響も含めて考慮する。

3.Assess(対策を検討する)

評価したリスクや機会に対して、どのように対応するかを計画する。つまり、リスク軽減や回避、受容、移転といったアクションを検討し、必要な戦略を設計する。そして、持続可能な資源調達、環境規制の順守、代替資源の導入などの具体策が含まれる。

4.Prepare(準備・開示する)

最終的に、リスクや機会に対応する計画を実行し、関係者に対してその対応を開示する。開示については、投資家やステークホルダーに対して、企業が自然関連リスクにどのように対応しているかを示す透明性を確保する。このプロセスを通じて、企業は持続可能な取り組みを評価され、信頼性や競争力を向上させることができる。

LEAPアプローチの意義

LEAPアプローチは、企業が自然資本との関係性を明確にし、リスクを財務的観点から捉える枠組みである。この手法を活用することで、企業は環境保全と経済活動のバランスを取りながら、持続可能な経営を進めることが可能となる。さらに、自然関連リスクへの適応力を高めることで、競争力の向上や長期的な成長にもつなげられる。

 カーボンフリーコンサルティング代表取締役 中西 武志