神戸山田錦推進研究会 「官民農連携の酒づくり」新フェーズへ 持続可能な日本酒を高品質化し「純米大吟醸」に
神戸酒心館は、プレス向け発表会を開催し、持続可能な酒米および日本酒生産を目指して2020年に立ち上げた官民農連携組織「神戸山田錦推進研究会」の4年間の活動報告と、来春発売予定の日本酒「環和‐KANNA」について発表した。

同研究会は、全国有数の酒米(山田錦)の生産地・神戸市北区が抱える生産者の高齢化や日本酒需要の減退による作付け減少などの課題を、新しい技術や付加価値等で解決し、持続可能な酒づくりを目指そうとする研究組織で、兵庫六甲農業協同組合、神戸北山田錦部会(生産者)、神戸市、コニカミノルタ、神戸酒心館が連携して取り組んでいる。
具体的には「持続可能な」肥料として下水汚泥由来のリンに着目し、地元の神戸市東灘処理場で高濃度に抽出された「こうべ再生リン」を配合した肥料「こうべハーベスト」を開発。研究および普及活動を行っている。
JA兵庫六甲神戸北営農総合センターの田中敏子マネージャーの報告によると、当初は肥料切れを起こして肥料設計を見直す一面もあったが、21年度以降は改善効果を確認し、23年度からは栽培暦にも採用。23年度の供給実績は20キログラム入り920袋(推定面積74ヘクタール)にとどまったが、24年度は2499袋を売り上げ、推定面積270ヘクタールにまで増加。「酷暑、曇天が続き、天候が芳しくなかった昨年でも例年通りに収穫できたことが評価された」。
また、生産者の高齢化による課題解決に向けては「リモートセンシング」技術を活用した「水稲栽培技術の可視化」にも取り組んでいる。米栽培において非常に重要な生育状態観察だが、従来法(実地での葉色、茎数、草丈計測)は重労働で、圃場全体の把握は困難。同技術ではそれを解決し、ドローンを使った成育度合いの遠隔観測で、効率的に全体の成育度合いを把握できる。コニカミノルタセンシング事業本部の柴谷一弘事業推進部長は、「酒米に関しての情報は非常に貴重なので、4年間の蓄積データこそが大きな成果。さらに研究を進め、稲の黄化率によるモミの水分の推定から、刈り取り適期の診断へと発展させて、刈り取りのスケジューリングにも貢献できることを目指したい」と述べ、取り組みの継続に意欲を見せた。
また「酒づくり」を持続可能なものとするため、醸造する日本酒に付加価値を持たせることを目的に設置している「付加価値創出部会」では、「新しいフェーズに入る」(神戸酒心館・安福武之助社長)として、作り出す日本酒の付加価値を「環境配慮」「サステナブル」だけでなく、「高品質」で訴求すると強調。昨年収穫して今年仕込んだ「環和」を従来の純米吟醸酒(精米率60%)から、日本酒の最上ランクである「純米大吟醸」(精米率50%)とした。
「精米率50%の純米酒の醸造は非常に難しい。昨年は天候不順だったにも関わらず品質のよい酒米が取れたことで実現できた」と醸造部・宮本哲也部長。1年ほど瓶内貯蔵で寝かせて出荷する。「25年の大阪・関西万博のタイミングにも合わせ、高品質・高付加価値を大きくPRしていきたい」(安福社長)。