歴史の岐路 バイデン米新大統領は1月20日に就任した。歴史の大きな節目であった。 就任演説はバイデンの個性を反映して地味だったが、今の荒廃したアメリカ社会では、熱狂的な演説よりも国民に語りかける落ち着いた話し方が良かった。78歳という高齢が懸念されるが、むしろ人生の幾多の荒波を超えてきた経験が、今日の状況ではプラスである。トランプ時代は自国の利益を最優先とし、国家間の対立を深める一方、国内では人種やジェンダーなどの対立が深刻化した。さらにコロナの被害が加わり、社会の分裂・分断が際立った4年間だった。 19世紀にフランスの政治思想家トクヴィルは、アメリカ滞在経験を基に『アメリカにおけるデモクラシー』を著した。トクヴィルはフランスと比較してアメリカのデモクラシーの熟成を評価した。アメリカ社会ではピューリタニズムとデモクラシーが定着し、自由平等な社会が実現していると述べた。 トクヴィルが訪問した以降もアメリカの民主主義は発展し、世界の模範となった。戦後の日本もアメリカに習い、民主主義国家を形成していった。 しかし、経済の発展やグローバル化の進展に伴い、所得格差の拡大がアメリカ社会に生まれた。中産階級だった白人層が脱落し、政治や社会に対する不満が充満していた。攻撃の対象は移民などの非白人に向かった。これを吸い上げて大統領になったトランプは、自由平等を基本とする民主主義を否定する政策を遂行した。 |