環境新聞
ホームページ内検索
検索
試読・購読お申し込み 環境新聞社とは メールマガジンのお申込み(無料)
Home 総合 エネルギー・低炭素 環境経営・CSR 資源循環 水・土壌環境 環境広場 大阪支社発 環境福祉
環境福祉 記事一覧
【連載】環境福祉学講座127 炭谷茂・恩賜財団済生会理事長 富山国際大学客員教授;環境福祉学の理論と実践の体系(6)環境福祉学の到達点のSDGsとESG
環境福祉学に見る歴史

 前回まで環境福祉学の必要性を述べてきたが、今回から環境福祉学の体系の重要な項目である環境福祉の歴史を考察することにしたい。
 世界の歴史を辿ると、環境福祉は変化・発展している。古代から人間は自然環境の脅威と闘い、生活を維持してきた。
 福祉の公的な制度の始まりは、16世紀初頭にイギリスで制定された救貧法である。古代から生活困窮者に対し、ヨーロッパでは王室や教会、日本では皇室や寺院などの慈善的な事業が中心にあり、福祉事業は貧弱そのものだった。環境と福祉の両者の悪化が、相乗して人々の生活を悲惨にした歴史といえる。

壮大な遷都の歴史

 古代の日本では遷都が頻繁になされた。難波京、飛鳥京、近江京、紫香楽京、平城京、藤原京、平安京と主な都を拾っただけで相当数に上る。なかでも聖武天皇は25年の在任中に4度、遷都を繰り返した。
 まず740年に平城京から恭仁京に遷した。造営途上で4年という短期間に難波京に遷したが、難波京はもっと短命で、1年も経たないうちに紫香楽京に遷す。ここはわずか4カ月に終わり、再び平城京に戻った。
 聖武天皇がなぜ遷都を繰り返したのか、古代史の謎である。有力氏族の権力争い、反乱、地震などの災害、疾病の蔓延など諸説が提起されている。今日に古代の都跡を訪れると、壮大な都の規模が浮かんでくる。
 また、大規模な都の造営は、国家財政の疲弊を招いた。租税を負担した民衆の生活は窮迫を極め、怨嗟の声が上がった。建材の一部は再利用したが、周辺の森林は伐採され、禿山化した。聖武天皇は大仏の造営にも着手したので、民衆の負担は一層重くなる一方で、銅の精錬のための大量の木材が消費されたため、森林が消滅していった。まさに環境と福祉両面にわたって多大な問題を残した時代である。
 聖武天皇の皇后が生活困窮者に医療を提供する
施薬院を設置したのも時代の要請からである。当時、遣唐使によって大陸からもたらされた天然痘で人口の25〜35%が死亡したが、環境福祉の劣悪さで被害は増大した。
 17世紀に滅亡したイースター文明は、巨大なモアイ像を建立するために、大量の木材を必要とし、森林が消滅したことが文明滅亡の主因であるとされている。
 このように、環境福祉の視点で歴史を見ることは、現代でも大きな教訓を与えてくれる。

環境福祉が与える意義

 世界でSDGsやESG(環境・社会・ガバナンス)投資の取り組みが活発に進められているが、これらは環境福祉学の現在の到達点である。
 SDGsが国連で採択されたのは15年で歴史は
浅く、日本では18年頃から国、自治体、企業、大学など幅広い主体によって実施されるようになった。また、同じ頃にESG投資が始まった。それ
以前はSRI(社会的責任投資)と称され、環境
や社会を重視し、利益を考慮しない投資手法で、財務リターンが低いと考えられた。1999年にエコファンドと称して発売されたのが最初であるが、順調には発展せず、低迷が続いた。
 しかし、地球環境の悪化により社会の持続性に不安が広く持たれるようになり、国連環境計画(UNEP)と国連グローバル・コンパクト(UNGC)は、投資家がESGの配慮を定めた責任投資原則(PRI)を策定した。06年に当時のアナン国連事務総長が金融業界等に対しESGの取り組みを呼びかけたことで、世界の金融機関等によるPRIの採用が広がった。
 日本では15年にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がPRIに署名し、履行を表明したことが契機になって、ESGへの関心が広がった。20年8月現在、世界で3332機関が署名しているが、日本では85機関が署名している。SRI時代は社会貢献の観点であったが、ESGは組織の持続性という存立に関係するようになった。
 SDGsもESGも崇高な理念の提示や幅広い参加組織などから、現時点での環境と福祉両面の到達点といえるものの、環境福祉の取り組みには、多くの限界もある。

(2021/01/07)
添付資料
特集・論説
特集企画
連載/社説/コラム
各種情報
イベント案内
インフォメーション
その他のお申し込み
環境関連書籍
広告のお申し込み
その他
環境新聞について
お知らせ・ご案内
ご意見・情報提供
お問い合わせ
Adobe Readerダウンロード Adobe Reader
ダウンロード
PDFファイルの表示するにはフリーソフトAdobe Readerが必要です。
ご使用のコンピューターにインストールされていない場合は、Adobe社サイトよりダウンロードしてください。
サイトマッププライバシーポリシー環境新聞発行案内メールのお申し込み
環境新聞社
(株)環境新聞社ホームページに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。
すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
(c)Copyright2005 Kankyoshimbunsha,Co.,Ltd. All rights reserved.
環境新聞社とは 環境新聞社の事業 環境新聞社の歩み 環境新聞社の概要