米連邦最高裁は先月30日、発電所に対する温室効果ガス(GHG)の排出規制について、米環境保護庁(EPA)の権限を制限する判決を下した。石炭産業の盛んなウェストバージニア州がEPAを提訴していたもので、バイデン政権の脱炭素政策にとって逆風となる▼判決では、発電所へのGHG排出規制は許容されるものの、クリーンエネルギーへの移行など発電形式を変更させる包括的権限は、現行の大気浄化法にはないと指摘。こうした規制の実施には、より明確な法制度を議会が整備し、具体的権限を政府に与える必要があるとする意見書を連邦最高裁長官が提出している▼一方、今回の判決について、バイデン大統領は同日、声明を発表。「わが国を後退させることを目的とした壊滅的な判決」と批判し、「公衆衛生を保護し、気候危機に取り組むため、合法的に当局を使用することを躊躇しない」と強調した。その上で、法務チームに対し、連邦法の下、気候変動を引き起こす有害な汚染から米国人を保護し続ける方法を見付けるよう指示したことを明らかにした。規制権限のより明確な法制度の整備は容易な情勢でないが、パリ協定を殺さないためにも、米国は何としても気候危機対策のリーダーに踏みとどまる必要がある。 (工) |