「私でなければ、誰が?」「今でなければ、いつ?」――英女優、エマ・ワトソンが、2014年に国連本部で行ったスピーチの一節だ。彼女は、国連UNWOMENの親善大使を務め、熱心な環境保護活動家としても知られている▼スピーチは、当時、国連が新たに開始したジェンダー平等のキャンペーンに、男性の参加を呼びかけるも
の。冒頭で、彼女は「フェミニズムという言葉は、なぜ居心地が悪いのか」と疑問を投げかける。男女平等を示す言葉「フェミニズム」を主張する女性は、「攻撃的で、孤立し、男嫌いで、魅力がないと思われる」という▼ジェンダーは一方で、男性の問題でもある。日本では、30〜40
代前半の男性の死因のトップは自殺で、その総数は女性の約3倍だ。遺書などで、「経済問題」を動機に挙げた男性は、女性の約9倍に及ぶ。男性に過剰な責任と負担を強いる社会構造が男性を苦しめており、その根幹には、「私たちは違う」という決め付けがあるのではないか▼公害の歴史や、開発を巡る企業と市民の対立など、利害による対立が起きやすい環境問題にも同様の構図があ
る。その時、冒頭の言葉を思い出したい。立場の違いを超えて、自分の心に従うこと。それこそが、私たち自身を自由にすることだと。(央)
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