良質な訪問介護ヘルパーの確保・育成へ UPDATE:2004/12/03

介護保険被保険者の範囲拡大 対象年齢25歳以上も

  • 09年全面実施へ 厚労省案提示
  • 取りまとめは難航必至

 厚生労働省は十一月二十九日、社会保障審議会介護保険部会に被保険者・受給者の範囲を拡大する場合の具体案を提示した。被保険者の年齢は、学生を入れると未納の温床になるとの批判に配慮し二○歳以上とする案のほか、二五歳以上、三〇歳以上とする三案。準備に時間がかかることから〇九年の全面実施を目指して段階的に施行する案も示した。来年度予算編成に間に合わせるために部会では今月初旬には取りまとめる予定だが、負担増には反対意見も根強くあり、取りまとめは難航しそうだ。
 見直し案は、被保険者・受給者の範囲を拡大するとともに、現在の受給条件である「老化に伴う介護ニーズ」を廃止する。これにより、難病やがん末期患者などこれまで制度の谷間になってサービスが受けられなかった人も年齢にかかわらず介護サービスが受けられるようになる。介護保険制度を国民共通の「普遍的」なサービスにするのをねらいとする。対象年齢は「ゼロ歳以上」とし、障害者施策のうちホームヘルプなど介護保険と重なる部分は介護保険を優先するようにするのが基本的な骨格だ。
 被保険者の範囲を二〇歳以上にすることについては、この年齢では学生も多く負担能力もないことから「空洞化」につながりかねないと批判が強いため、二〇歳以上、二五歳以上とフリーターの数も減り就労状況が落ち着いてくる三〇歳以上の三案を示した。三〇歳以上とした場合は、四〇歳以上の半額とする選択肢はなく満額を徴収する内容だ。この場合、三〇〜三九歳の年齢層では大きな負担増となる。
 たとえば、乳幼児の要介護認定をどうやって実施するかなど給付対象を広げる場合には従来の枠組みだけでは対応できない場面も多い。(以下略)

移動介護  地域生活支援事業に

  • 障害サービス法案基に 厚労省が見直し案

 厚生労働省は十一月二十六日、来年の通常国会提出を予定している「障害福祉サービス法案」(仮称)に基づき新たな事業体系に移行する場合、現行の移動介護については基本的に市町村が独自で行う「地域生活支援事業」とし、四肢まひや自閉症など重度の障害者に限定して国の負担義務のある「個別給付」扱いにするなどの見直し案を提示した。
 社会保障審議会障害者部会に示したもの。同省は新制度を来年の通常国会で成立させ、二○○六年度から段階的に移行していくことを目指している。現行のホームヘルプやデイなど、基本的な介護にかかわるサービスを「個別給付」、機能訓練や就労支援などを「自立支援給付」とし、基本的にこの二種類を国庫負担義務のある給付と位置付け、その他は市町村ごとに整備する「地域生活支援事業」に再編する方針だ。
 在宅サービスの再編については、支援費ホームヘルプの中でも特に利用の多い移動介護の扱いが焦点とされていた。同省では実態調査を行って急増の要因を分析しているが、「予め支給額を決定してしまうと突発的なニーズに対応しにくく、使い勝手が悪い」として、基本的に地域生活支援事業に位置付け、地域の実情に応じて柔軟性のあるサービス提供体制を整えていくべきとした。自閉症やてんかんのある知的障害者、統合失調症など強度の行動障害や四肢まひの身体障害者など、移動時にマンツーマンでの介護が必要な重度障害者に限っては「個別給付」とするが、その際も一定時間継続した利用を想定した単価を設定するなどして給付に歯止めを設ける考えだ。(以下略)

急性期患者の転院問題解決へ 医療と介護の「結合」を

  • 「分立」が行き場なくす
  • 乏しい療養の選択肢 患者に負担しわ寄せ

 医療と介護の連携強化は今回の介護保険制度改革でも大きな柱だ。しかし、制度が切り離されている限り解決できずに積み残されていく問題がある。急性期病院で治療が終わっても自宅に戻れず、「転院」を繰り返している患者の実態について調査した「転院問題を考える会」も、医療と介護の分立が医療ケアを必要とする患者の行き場をなくしていると指摘する。必要なのは「連携」ではなく両制度の「結合」。どこにいても医療保険と介護保険が併用できるようにするべきという提案は、多くの人の実感と重なるものだろう。
 「転院問題を考える会」は、東京都江東区にあるひらの亀戸ひまわり診療所の医療ソーシャルワーカー(MSW)、高山俊雄さんを中心に一二人ほどのMSWで組織するグループだ。もともとは自己研鑽のためにと自主的に開いていた事例検討会だったが、その議論の大半を占めていたのが「転院」にまつわるワーカーの苦悩だ。
 「MSWは本来患者さんの主訴に基づいて仕事をする職種なのに、転院の相談は医師からの指示で開始される。つまり、本人の希望ではないところからスタートしなければならない。患者さんや家族はどんな気持ちを抱いているのだろうかという疑問が大きくなっていきました」(高山さん)
 「転院」をテーマに患者・家族の実態調査を開始したのが九九年。都内一五病院・二二名のMSWに協力を依頼してアンケート調査を行った。直近の一年間で転院した七五人の患者・家族から回答を得たが、驚いたのは、転院後の療養の場の希望が患者と家族で大きくズレていたことだ。
 「自宅へ帰りたかった」とした患者本人が五二・五%と半数を超えていたのに対し、家族が自宅への退院を希望していたのはわずか一○%。さらに、自由回答欄には「廊下の隅でいいから置いてほしかった」「転院がきっかけで病状が悪くなったら誰を怨めばいいのか」など、転院が本心ではないことを訴える声がびっしりと綴られていたという。いずれも相談員であるMSWには打ち明けられていなかった「本音」だ。(以下略)

家族以外の吸引 ヘルパーが9割占める 在宅ALS患者

  • 都立保健大が調査

 在宅で人口呼吸器を使用しながら療養するALS(筋萎縮性側索硬化症)患者の吸引の実態について東京都立保健科学大学川村佐和子教授らが調査を行ったところ、全体の三割強で家族以外の者が吸引を行っており、そのうち九割近くがヘルパーであることが分かった。訪問看護に対しては「滞在時間や訪問回数が不足」とする声が多く、ヘルパーとの違いが分からないとする意見も二割あった。
 厚生労働省は在宅で療養するALS患者の「吸引」に限って家族以外のヘルパーなどにも認めるようにした。三年後の見直しに向けてデータを収集するのが調査のねらい。全国の保健所保健師と療養者に対する実態調査の二本建てとなっており、二○○三年十二月〜二○○四年二月までを調査期間とした。
 ALS患者の概況を見ると、全国五七一一人のうち人工呼吸器使用者は一五三○人(二六・八%)で、六六五人が在宅療養中。このうち、療養者の現況について患者・家族に直接聞いたところ、吸引者の平均人数は三・六人だったが、最も多いのは「五〜一○人」で二五%。四人以上で見ると全体の四割以上を占めていた。
 「家族以外が吸引を行っている」としたのは、三割強で二一八人。その九割がヘルパーとなっておりダントツだ。医療職や家族以外が吸引を行う際には、患者本人の同意を得ることや医療職による研修を受けることなどが条件となっているが、研修については八五%が受けていたものの、「なし」も一割。医療職による定期的な指導・管理を行っていない割合も四四%に上っていた。(以下略)

良質な訪問介護ヘルパーの確保・育成へ

  • 能力開発の現状 1年程度見習い期間に
  • 2級資格 職業能力は保証せず
  • 堀田聰子・東京大学社会科学研究所人材ビジネス研究寄付研究部門助手

 訪問介護の担い手の多くを占めるホームヘルパー二級の資格をみると、講義・演習・実習あわせて一三〇時間の研修の受講によって無試験で取得することができる。つまりホームヘルパー資格は、実務能力や知識に関して公的(国家)試験でその能力を評価したものではなく、必ずしも一定の職業能力を保証するものとはなっていない。
 下表はヘルパーの仕事を一八に分け、難易度に応じた五四の課業のそれぞれについて習熟度を自己評価してもらい、ヘルパーの介護能力を得点化した調査結果である。これによれば、全ての課業について「実務経験がありだいたいできる」場合は五四点となるが、通算経験一年以下では総合得点が五〇点未満にとどまっていることが分かる。これは、資格取得から一年間程度は実務経験に基づく見習い期間と位置付け、職業能力開発を行うことが特に重要であることを意味している。
 しかし、実際には、@ヘルパーが利用者宅を一人で訪問してサービスを提供すること、ヘルパー宅から利用者宅への「直行直帰」が多いという訪問介護サービスの特徴から、先輩や同僚のアドバイスを仕事中に受けるといった現場での継続的な能力開発の実施が困難であること、Aヘルパーの能力の伸張度合いを測定・評価する仕組みがなく、また利用者のサービスニーズと就労者のマッチング、各種変更や調整などの就業管理が煩雑化し、個々のヘルパーの能力や難易度に見合った人員配置が難しいことなどから、ヘルパーの仕事に従事した後の能力開発の機会は必ずしも十分に確保されていない現状がある。
 また、現行の介護報酬は、サービス内容と提供時間に応じて決まる体系であり、実務経験に応じたヘルパーの職業能力の伸張度合いを反映するものになっていない。このことは、賃金も職業能力とは関係なく、サービス内容と提供時間に即して決められるべきものと考えられ、ヘルパーの能力開発意欲を低下させがちとなる。(以下略)







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